当該年度では昨年度までで明らかとなった全唾液からexosomeを密度勾配遠心にて精製し、唾液の前処理としての超音波処理のexosomeへの影響についての検討であるが、exosomeは前処理の超音波では小胞の膜を破壊されるようなことはなく、むしろ高粘性をもつ唾液からの精製においては非常に有効な方法であることがわかった。 そこで本年度は透過型電子顕微鏡にて唾液exosomeの大きさを解析、また一次抗体によって修飾されたゴールドのコロイド粒子用いて免疫染色することによって、唾液exosomeに発現するタンパク質と、その粒子の大きさによって、2019年度に明らかにした密度とタンパク質によるサブクラス化の情報をより豊かに明らかにする研究を進めた。 まずは未だ多くの実験者が行っていないポジティブ染色による透過型電子顕微鏡の唾液エクソソーム解析をおこなうため、ポジティブ染色法の条件検討から行なった。密度勾配遠心で精製した唾液exosomeの沈殿物は非常に小さいので、先にパラホルムアルデヒドの固定液で固定させてからレジンへ包埋し、薄切、染色、観察すると、ポジティブ染色によって唾液exosomeらしき小胞を観察することに成功した。次に免疫染色に発展させるために条件検討をおこなった。 包埋、薄切後に、抗原性を高めるために酸処理しCD81抗体修飾金コロイド粒子にて免疫染色を行なったところ、金粒子が小胞膜表面にいくつか結合する唾液exosomeをいくつか捉えることができた。しかしながら唾液exosomeのサイズが予想よりも小さく、金粒子の大きさで小胞が覆われるケースが多かった。また粒子を小さくすると同じ条件で観察できなくなることも予想されるので、今後はより小さい金粒子のサイズでの実験手技の検討が望まれる。
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