研究課題/領域番号 |
19K18970
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
高橋 有希 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (30778626)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 低ホスファターゼ症 / 遺伝子治療 / アルカリホスファターゼ / 胎児治療 / 酵素補充療法 / 硬組織 |
研究実績の概要 |
低ホスファターゼ症(hypophosphatasia, HPP)は硬組織の石灰化不全、呼吸困難、痙攣発作、乳歯の早期脱落を主徴とする遺伝性疾患である。本邦においては致死性である周産期重症型や乳児型の頻度が高く、これらは胎児期に症状が進行し、死産または出生直後に死亡、あるいは出生した場合でも、重篤な呼吸機能不全を伴うことが一般的である。現在、酵素補充療法が行われているが、治療開始時期が新生児期からであるため周産期重症型には対応できておらず、酵素の半減期の観点より、長期反復投与の必要があるため侵襲性が高い。そこで、これらの問題を解決するために行った、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターによる胎児治療実験において、単回投与での延命効果を得ることに成功した。 しかしながら、組織非特異的プロモーター制御であるため、AAVウイルスが導入されたすべての臓器で導入遺伝子が過剰発現し、予期せぬ副作用がおこる可能性がある。 したがって本研究課題では、筋特異的プロモーター制御下における胎児遺伝子治療の治療効果および安全性に関して検証することを目的としている。 2019年度は、標的臓器をすでに治験にて安全性が認められている筋肉に限局させ、安全性の向上を図るため、筋特異的プロモーター制御下に治療遺伝子である組織非特異的アルカリホスファターゼを発現可能なプラスミドを使用したAAVベクターを構築した。以前使用した筋特異的プロモーターである筋肉クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーターをもとに新構築し、さらに強力な発現力をもつよう変更した。これにより、投与AAVベクター量の減量が可能となり、安全性の向上が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、標的臓器をすでに治験にて安全性が認められている筋肉に限局させ、安全性の向上を図るため、筋特異的プロモーター制御下に治療遺伝子である組織非特異的アルカリホスファターゼを発現可能なプラスミドを使用したAAVベクターを構築することとした。 現在、筋特異的プロモーターである筋肉クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーターをもとに改良し、さらに強力な発現力をもつよう変更することに成功しており、これを使用した強化筋特異的プロモーター制御、治療用AAVベクターを作成済みである。 したがって、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
胎児遺伝子治療は、安全面に関しての課題が残されている。 よって、2019年度に作成した治療用AAVベクターを使用して、HPPモデルマウスを使用した治療実験を行い、出生直後および治療マウス90日齢、360日齢それぞれより、①出産時および出産直後の状態の確認、②治療効果、③AAVベクター分布、④AAVベクター投与による呼吸機能、⑤行動量、⑥免疫反応および異所性石灰化の有無、の6点に関して評価・解析することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に使用を計画していた試薬の値段が下がっていたために差額が生じた。次年度に試薬を購入する費用として使用する予定である。
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