研究課題/領域番号 |
19K18972
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
加藤 晃一郎 鶴見大学, 歯学部, 非常勤講師 (30719373)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 口腔扁平上皮癌 |
研究実績の概要 |
診断と治療法の進歩により5年生存率が飛躍的に向上した口腔扁平上皮癌であるが、治療抵抗性患者の予後は未だに不良であり、以前から新たな治療法の開発が切望されている。しかし、口腔扁平上皮癌に対する有効な治療薬の開発は未だ停滞しているのが現状である。そのため、口腔扁平上皮癌の予後の決定因子である浸潤・転移の分子機構の解明とそれに基づく新規治療法の開発は重要な研究課題である。 がん細胞の特徴は無限の増殖と浸潤・転移能であり、その制御法に関しては抗癌剤に加え、分子標的治療や近年ではがん免疫療法の開発が精力的に展開されている。特に浸潤・転移能に至っては、関係する複数の分子経路が明らかにされてきたものの、制御法の確立には至っていない。 細胞膜活性脂質sphingolipidの代謝経路において、Ceramid/sphingosin系のアポトーシス制御への関与はこれまで知られていたが、浸潤能亢進におけるsphingosinのリン酸化とその細胞膜受容体S1PRを介する細胞骨格再構成が報告されており、これらの情報からSphingolipidが機能分子の細胞膜での再配分、シグナル伝達集積、細胞骨格再構成などを介し口腔扁平上皮癌の浸潤能亢進に寄与する仮説を検討した。特に口腔扁平上皮癌の予後と深く関与する浸潤と、活性型スフィンゴ脂質として注目されているsphingosin-1-phosphate(S1P)の産生に関わるsphingosin kinase 1(SK1)に着目し、発現を免疫染色にて再度解析したところ、SK1が腫瘍先進部腫瘍細胞細胞膜とその近傍の反応性間質細胞に高発現を認め、特に浸潤能の高い症例では高発現が多くみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19パンデミックに伴う移動制限により、研究協力者との共同作業部分に遅れが生じた。しかし、それもようやく以前と同様に稼働ができる状況となり、今後は十分な研究遂行が可能と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
口腔扁平上皮癌で外科的切除された組織を用いて免疫組織学的解析を行う。項目としては、脂質代謝のマーカーとしてSPHK-1、およびレセプター5種類の発現をそれぞれ点数化し浸潤および転移能を解析する。また、免疫生物学的手法を用いてT細胞関連因子およびT細胞受容体を網羅的に検討することで、リンパ節転移に対する腫瘍免疫応答のメカニズムを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力者と試薬の一部を共用できたため、次年度使用額が発生した。結果の再現性を検証する目的に反復実験も計画しており、次年度の交付額に加えて必要な物品および試薬購入代として使用する。
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