恒常性調節型M2マクロファージによるTh1型病変を主体とする口腔粘膜疾患の抑制法の確立を目指して研究を進めた。①恒常性調節型M2マクロファージの誘導機序を明らかにして、再現性の向上を図った。具体的には、pan-macrophageであるRaw細胞をM1およびM2型マクロファージに誘導した。M2マクロファージと間葉系幹細胞(MSC)を共培養を行うことにより、恒常性調節型M2マクロファージを確実に再現性よく回収できることが明らかとなった。②Th1型病変のエフェクター細胞であるM1マクロファージが、抗炎症作用に関与するM2マクロファージを不活性化する因子を産生するかを検討した。実験的には、M1マクロファージの短期培養からの培養上清が、M2マクロファージおよび恒常性調節型M2マクロファージが持つ抗炎症機能を制御することが明らかとなった。③恒常性調節型M2マクロファージのTh1型病変への抑制効果を検討した。恒常性調節型M2マクロファージはRawからの誘導からのおよび病変部からのM1マクロファージが保持している起炎症作用を抑制することが明らかとなった。また、長期間の恒常性調節型M2マクロファージとM1マクロファージ共培養では、M1→M2の形質転換の傾向が認められた。これらの結果から、Th1型口腔粘膜病変はエフェクター細胞であるM1マクロファージがM2マクロファージを不活性化して抗炎症機能を抑制して病変が進行する可能性が示唆された。また、恒常性調節型M2マクロファージはM1マクロファージを不活性化することが明らかになった。したがって、難治性のTh1型口腔粘膜病変の治療には、恒常性調節型M2マクロファージの投与が病変を抑制できる可能性が示唆された。
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