歯周病は歯周病原細菌により引き起こされる複合感染症であり、近年その発症と進行にはヘルパーT細胞であるTh17による免疫応答の関与が示唆されている。生体内におけるTh17の分化の場が主に小腸であることから、口腔内で増殖した歯周病原細菌が経消化管的に腸管に到達し、腸管粘膜に取り込まれたTh17が口腔に遊走し、歯周病病態を形成する可能性がある。口腔局所での感染が原因と捉えられてきた歯周病を、腸管を主体とした全身における免疫細胞の分化と口腔への遊走が疾患を制御するという観点で、Th17誘導能を有する歯周病原細菌のT細胞抗原の同定に基づく、Th17へのバランスシフト解除による新しい歯周病予防ワクチンの開発を目指し解析を進めてきた。 これまでのの研究成果として、重度歯周炎に関わるRed complex 細菌の全3菌種を対象とし、マウス歯周病モデルを用いたTh17細胞への分化誘導を促す菌体画分を同定済みである。菌体表層の病原因子のみならず、網羅的にTh17誘導能をもつ特異的ペプチド抗原の検証を進めた。 P. gingivalisにおいては、菌体成分からさらに絞り込んだT細胞責任抗原候補タンパク質を大腸菌で発現精製し、IL-17Aを指標にTh17分化における至適濃度を細胞増殖能で評価した。T細胞責任抗原候補タンパク質発現菌投与マウスを用いた歯周病モデルを用い、歯槽骨吸収の実体顕微鏡での解析により歯周病病態を評価した。Ki67を用いたCD4陽性細胞の増殖評価だけでなく、実際の病態形成に関与する、歯周病原細菌特異的抗原反応性Th17を誘導するT細胞責任抗原を絞り込みを進めることができた。 病態形成に関わるTh17分化に関わるRed complexの複数の菌種由来のT細胞責任抗原についての解析を進めることにより、強力な歯周病予防法ならびに歯周病が関与する全身疾患メカニズムの解明にへの寄与が期待される。
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