令和2年度は、まず昨年度新たに大腸がんと唾液検体から分離したF. nucleatum分離株のゲノムシークエンスを行った。それらと合わせてこれまでにゲノムシークエンスを行った菌株のゲノムアセンブリの質に関して検討を行い、使用したシークエンサーPacBio社Sequel IIのCCSモードで得られるリードを使ってゲノムアセンブリをする方法に変更した。高品質なリードを使用することとしたためリード数が不足してしまった菌株については本菌の平均ゲノム長を2.5Mbpとして概算し100×以上の充分なカバレッジを得るために必要に応じて追加のゲノムシークエンスを行った。 リピートやコンタミネーションがなく、2.0Mbp以上のサイズにアセンブリされたコンティグを大腸がん分離株として18株、唾液分離株として30株分得ることができた。 大腸がんと唾液から分離した菌株のうち、同一のAP-PCRパターンを示す菌株ペアのゲノムの相同性をANI(Average Nucleotide Identity)によって評価したところ99.99%以上の値が得られたことから、これまでの仮説の通り大腸がんのF. nucleatumが口腔に由来することを強く示唆する結果を配列レベルで確認することができた。 大腸がんのF. nucleatumに特徴的な遺伝子を特定することを目的として解析を行い「全ての大腸がん分離株が保有している一方で、唾液分離株では非保有の菌株が存在する遺伝子」、すなわち大腸がん分離株に偏って保有される遺伝子のリストとして105遺伝子を特定できた。
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