エクソソームは細胞から分泌される膜小胞であり、タンパク質のみならずメッセンジャーRNAやマイクロRNAなども含めた膨大な情報伝達物質を他の細胞に伝達する役割がある。また歯根膜線維芽細胞においてはエクソソームの分泌がメカニカルストレスにより誘導されることを報告している。一方で歯周組織の再生に不可欠であるセメント芽細胞の分化制御には分泌型糖タンパクWntのシグナル伝達経路が関与することが報告されている。本研究の目的は、エクソソームとWntシグナルのコンビネーションによるセメント芽細胞の分化成熟作用を応用した歯周組織再生誘導法の開発である。 今年度は硬組織形成細胞に対するメカニカルストレスの付与にあたり、卓上型真空プラズマ処理装置(Strex Co.)による親水化処理を施したチャンバーに細胞の播種を行い、生着した細胞の進展刺激を行った。マウスセメント芽細胞株において、10/60Hz、伸展率20%の条件下にて3日間細胞を培養しその遺伝子発現を解析したところ、転写因子Runx2や初期骨分化マーカーであるアルカリフォスファターゼの発現抑制に加え、後期分化マーカーであるオステオカルシンの発現誘導が認められた。加えて骨芽細胞および骨細胞での高発現が報告されている機械的刺激受容性イオンチャネルPiezo1の遺伝子発現誘導も確認された。以上により周期的伸展刺激がセメント芽細胞の後期分化を誘導し、その過程でメカノセンサーであるPiezo1が関与している可能性が示唆された。
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