研究課題/領域番号 |
19K18986
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
塩沢 真穂 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (60735679)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グラスアイオノマーセメント |
研究実績の概要 |
成形修復用グラスアイオノマーセメントは,硬化初期の機械的性質が十分でなく,長期耐久性が低いことが臨床的に問題となっている.これまでの研究で,硬化後のグラスアイオノマーセメントを高濃度の塩化カルシウム水溶液に浸漬することが硬化初期の表面硬さの改善に有効であることが明らかになった.しかし,塩化カルシウム水溶液処理を行ったグラスアイオノマーセメント表面には肉眼的に多くの亀裂が観察され,その長期耐久性には疑問が残る.これまでのセメントの表面強化方法は,高濃度(42.7 wt%)の塩化カルシウム水溶液にグラスアイオノマーセメントを10~60分浸漬する方法であるが,この方法自体がセメントの表面に亀裂を生じる原因となっている可能性が高い.そこで,低濃度の水溶液に浸漬したときの表面硬さと亀裂の発生について検討した. 20℃での飽和量を基準に,8.5,17.1,25.6,34.2,42.7 wt% の5種類に調整した塩化カルシウム水溶液と5%乳酸カルシウム水溶液を使用した.塩化カルシウム水溶液に浸漬した試料の表面硬さは,いずれの濃度の溶液に浸漬した試料も蒸留水に浸漬した試料と比較して有意に大きな値を示した.溶液濃度が高くなるほど,表面硬さは大きくなることが明らかになった.溶液濃度が小さくなるほど肉眼で観察される試料表面の亀裂は減少した.5%乳酸カルシウム溶液に浸漬した試料の表面硬さは,蒸留水に浸漬した試料と比較して大きな値を示したものの,有意な差は認められなかった.乳酸カルシウム溶液浸漬後の試料表面には,目立った亀裂の発生は認められなかった.試料表面の亀裂は,グラスアイオノマーセメントの長期耐久性に影響を及ぼすと考えられる.引き続き,セメントの表面強化効果を得られ,かつ表面性状への影響が最小限になる条件の検討を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,表面強化した成形修復用グラスアイオノマーセメントの長期耐久性の評価と,実用的な表面強化方法の開発を目的とし,最終的に臨床での応用を目指すものである.今年度は適切な表面強化方法の検討を計画しており,強化効果を得られ,かつ表面性質への影響が最小限になるような溶液の濃度と浸漬時間の検討を行った. また,臨床的にはグラスアイオノマーセメントを溶液に浸漬するのではなく,溶液を塗布する方法が現実的である.そこで,セメント表面への滞留性が良く,臨床条件下でのセメント表面処理に適した塗布材の開発と適切な作用形態を検討しているが,新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により,進捗がやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は研究を一時中断し,2022年度から再開する. グラスアイオノマーセメントの強化効果を得られ,かつ表面性質への影響が最小限になるような溶液の濃度と浸漬時間を引き続き検討し,適切な表面強化方法を確定する. さらに,セメント表面への滞留性が良く,臨床条件下でのセメント表面処理に適した塗布材の開発と適切な作用形態を検討することを目的とし,固形塗布材なども考慮に入れて粘度調整剤の検討を引き続き行っていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で,参加を予定していた学会がオンライン開催となり,旅費が発生しなかったために次年度使用額が生じた. 研究再開後には得られた研究成果を発表する予定である.
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