研究課題/領域番号 |
19K18990
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
松川 由実 (松田由実) 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (30804554)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 歯周病 / 歯周炎 / メタボライト / 抗酸化 / 機能性脂肪酸 |
研究実績の概要 |
まず、ヒト歯肉上皮細胞(Epi4)における、機能性メタボライトKetoCの酸化ストレス抑制効果を検証した。酸化ストレスは、活性酸素種(ROS)により緑色の蛍光を発するプローブを用いて検出し、蛍光顕微鏡およびフローサイトメトリーによって評価した。結果から、強力な酸化剤であるTBHPによって誘導されるROS産生が、KetoCの前処置により抑制されることが分かった。 次に、このメカニズムの解明のために、Epi4をKetoCで刺激した場合の抗酸化ストレス関連酵素の遺伝子発現をreal-time PCR法にて解析したところ、KetoC刺激による有意な上昇を認めた。続いて、これらの遺伝子発現を誘導することが知られている転写因子Nrf2の核内移行の有無をウェスタンブロッティング法にて検証したところ、KetoC刺激によって、抗酸化作用を持つスルフォラファンと同程度のNrf2の核内移行が確認された。また、ルシフェラーゼアッセイによって、核内移行したNrf2がプロモーターのARE領域と結合していることも分かった。さらに、Nrf2-AREを活性化する上流のシグナリングを検証する目的で、MAPキナーゼカスケードに注目しウェスタンブロッティング法にて解析したところ、KetoC刺激によりERKのリン酸化の亢進を認めた。最後に、KetoCの受容体として報告されている脂肪酸受容体GPR120の関与についてルシフェラーゼアッセイにて検証したところ、KetoCがGRP120を介してNrf2-ARE経路を活性化することが明らかとなった。 以上の結果より、機能性脂肪酸KetoCは、歯肉上皮細胞においてGPR120-ERK-Nrf2-ARE経路を介して抗酸化ストレス応答を誘導することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度のin vitro実験では、機能性メタボライトKetoCの歯肉上皮細胞における抗酸化作用について実証し、その分子機構を明らかにすることを目的としていた。実験は計画通りに進行し、結果より、KetoCが歯肉上皮細胞において、GPR120-ERK-Nrf2-ARE経路を介して抗酸化ストレス応答を誘導することが示唆されたことから、本研究が概ね順調に進展していると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度のin vitro実験によって示されたKetoCの抗酸化作用が歯周炎の病態形成に与える影響について、結紮誘導歯周炎モデルマウスを用いたin vivo実験にて検証する。 まず、 8週齢のC57BL/6マウスにKetoCを飲水投与し、7日目に上顎第二臼歯を5-0絹糸にて結紮することで歯周炎を誘導、14日目に安楽死させてサンプリング後、各種解析を行う。歯周炎の重症度は、実体顕微鏡を用いた歯槽骨破壊レベル (余剰な軟組織を可及的に除去し、ソフトウェア上で上顎第二臼歯のセメント-エナメル境から歯槽骨頂までの面積を計測)と歯周組織H-E染色による軟組織の破壊および炎症の程度によって評価する。酸化ストレスの評価は、酸化ストレスマーカーである8-OHdGの組織上での発現量と、歯肉組織サンプル中の抗酸化ストレス関連酵素の遺伝子発現およびタンパク発現をreal-time PCR法およびウェスタンブロッティング法、免疫染色にて比較検討する。 得られた結果について、日本歯周病学会学術大会および国際歯科研究学会にて発表し、国内外の研究者と討論する。また、 最終的には国際誌に投稿して成果を世界に問う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、学会や研究打ち合わせの計画が一部変更となった。また、物品の購入に関しても計画通りにできない時期があったため、次年度使用額が生じることとなった。 引き続き、学会への参加は難しい可能性が高いため、物品費として使用する計画である。
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