研究課題
歯髄の創傷治癒機構はいまだに解明されておらず、現在、覆髄剤として用いられている薬剤はその治癒機転に基づいているものではない。研究代表者はこれまでに硬組織形成においてもMMP-20が重要な役割を担っている可能性を報告した。一方、これまでにMMP-20欠失マウスにおける報告は、エナメル質形成のみを対象としており、後天的に生じる反応象牙質や修復象牙質形成に関する報告はない。これはMMP-20はエナメル関連たんぱくの分解酵素として働きから、エナメル芽細胞における役割が検討してきたためである。しかし、象牙質基質内や象牙芽細胞においてもMMP-20の発現が認められることが明らかとなっていることから、MMP-20欠失マウスを用いた覆髄実験モデルで歯髄の硬組織形成機序の解明を試みた。令和元年度では、マウスの窩洞形成モデルの確立を行った。令和2年度では、MMP20ノックアウトマウスの窩洞形成モデルでの評価を行った。しかし、想定された結果と異なり、MMP20ノックアウトマウスにおいても、Wild typeと同様に、歯髄の創傷治癒および第三象牙質形成が認められた。そのため、実験計画に従い、これまでの実験結果より得られたmTOR阻害剤であるラパマイシンを投与する実験系に切り替え、mTOR経路が歯髄組織における役割を検討した。結果として、mTOR経路を阻害することで窩洞形成直下の第三象牙質形成阻害と歯根の成長が阻害される知見が得られた。さらにRNA-seqによる網羅的な遺伝子解析によりmTOR経路を阻害することで好組織に関係する複数の遺伝子発現が抑制されることから、第三象牙質形成に重要な役割を果たすと考えられる候補遺伝子を見いだすことができた。
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