研究成果の概要 |
歯髄を失うと歯を喪失するリスクが上昇し, 健康寿命にも直結するため, 歯髄の活性を維持する直接覆髄処置は極めて重要である. 一方, 重要な処置であるが, その成功率は低く改善すべき課題である. 本研究では, 直接覆髄の成功率を向上を目指した歯髄の創傷治癒機転に基づく, 新規治療薬開発のため, これまでの研究成果に基づき, MMP-20欠失マウスを用いて実験を遂行した. しかし, 予想に反してMMP-20は第三象牙質形成に必須分子ではないことが示された. そこで, mTOR阻害薬であるラパマイシンを投与するモデルで評価したところ, 修復象牙質形成が再現性をもって阻害されることを明らかにした.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
歯髄を失うと歯を喪失するリスクが上昇し, ひいてはQOLや健康寿命に直結する問題であることが示されており,歯髄の活性を維持し治癒に導く直接覆髄は極めて重要な処置である. 一方, 直接覆髄の成功率はあまり高くなく, 現在用いられている直接覆髄剤が歯髄の創傷治癒機転に基づく材料ではないことは解決すべき課題である. 本研究では mTOR分子を阻害するラパマイシンを投与することで, 歯髄の創傷治癒が再現性をもって阻害された. これらの知見は歯髄炎に対する分子生物学的な標的としての可能性を示すとともに先天的な象牙質形成不全や知覚過敏などに対する新たな治療戦略を基盤構築につながるものである.
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