研究課題/領域番号 |
19K18997
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
中村 心 岡山大学, 歯学部, 客員研究員 (70837690)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ドラッグデリバリーシステム / 成長因子 / 歯周組織再生 / コラーゲン |
研究実績の概要 |
歯周病に対する再生治療剤として,塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)製剤が製品化された。しかし,bFGF製剤は適応症が垂直性骨欠損に限定される。そこで,細菌由来のコラーゲン結合ドメイン(CBD)とbFGFを組み合わせた融合タンパク質(CBFGF)に着目し,ラットの水平性骨欠損モデルを作製して投与したところ,歯周組織再生を促進した。CBDは多様な生理活性物質へ応用できると考えられるが,融合タンパク質を各物質で生産するには多大な時間とコストを要する。そこで,CBDの汎用性を拡大することを目的として,化学架橋剤を用いて,成長因子とCBDを連結することを考えた。組換融合型CBFGFを架橋型CBFGFへ変更するために,bFGFのシステイン残基とCBDのN末端をターゲットとし,架橋剤GMBSを用いて,化学架橋を行うことを試みた。まず,架橋反応の条件を決定するために,多量に必要となるbFGFとCBDを大腸菌生産系で精製した。現在は,精製したタンパク質を用いて,bFGFとCBDの反応比率,温度条件などの化学架橋の反応条件を検証している。また,CBFGFの有効性のメカニズムを解明するために,組換融合型CBFGFを,ラットの水平性骨欠損モデルへ投与し,その組織内滞留性の検討,FGFレセプターを発現した細胞数の定量,そして幹細胞数の定量を行い,bFGFと比較してCBFGFの優位性を実証した。これらのデータは,学会発表(Nakamura, et al, International Association of Dental Research, General Session & Exhibition, 2019,岡本ら,日本歯科保存学会,2019,高柴,BioJapan 2019)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
架橋反応に適した溶媒の選択やbFGFとCBDの反応比率,架橋反応時の温度条件など,架橋反応条件の決定に多くの時間を要している。そこで,並行して,CBFGFの有効性のメカニズムを検討するために,融合型CBFGF投与時の組織内滞留性と幹細胞数について評価した。これらの結果から,CBFGFは,そのコラーゲン結合活性によって,bFGFと比較して組織内に長期に滞留し,間葉系幹細胞を含む細胞増殖の促進と再生に必要な環境整備を行って組織再生を亢進する可能性が示された。これらの結果をまとめて,学会発表を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
CBDおよびbFGFは十分量の生産を行っているため,今後は研究協力者と連携して,最適なタンパク質の反応比率と架橋条件を決定する。また,今年度参加したパートナリングイベントにおいて情報交換を行った専門性の高い研究者と連携を図りながら実施する。作製した架橋型CBFGFは,細胞増殖およびコラーゲン結合活性について,既に融合型CBFGFで確立した方法を用いて評価する予定である。その後,速やかにラットの水平性骨欠損モデルを用いてその有効性を評価し,汎用性拡大を目指して,BMPとCBDの架橋実験へ着手する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品等の購入が安価に抑えられたため僅かではあるが次年度使用が生じた。当該予算は、次年度実施する評価や実験に必要な物品の購入費用に充当する予定である。
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