重度の歯周病に対する組織再生治療剤として,塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の臨床応用が開始された。しかし,増殖因子は標的特異性や組織滞留性が低いことと,適応部位が口腔内という薬剤が拡散しやすい環境であるために,適応症が垂直性骨欠損へ制限されることが課題である。そこで,細菌由来のコラーゲン結合ドメイン(CBD)とbFGFを組み合わせた融合タンパク質(CBFGF)に着目した。2020年度は,まずこれまでにラットの水平性骨吸収モデルで有効性を示してきた組換融合型CBFGFの歯周組織再生作用におけるメカニズムを明らかにするために,前年度に実施したフローサイトメトリーによる幹細胞様細胞の定量に加えて,免疫組織化学染色を行って,幹細胞に関連したタンパク質の定量を行った。その結果,CBFGFがbFGFと比較して長期的に幹細胞を刺激する可能性が示唆された。さらに,CBDの汎用性を拡大することを目的として,化学架橋剤を用いて,成長因子とCBDを連結することを考えた。前年度に精製したbFGFとCBDを用いて,様々な反応比率で化学架橋を行った。しかし,未反応のbFGFおよびCBDが相当量残存することや,bFGFとCBDの反応比率が1:1でない可能性,そしてbFGF同士で複合体を作る可能性など,反応比率や反応効率の点で,検討課題が多かった。これらについてはより専門性の高い研究者と協力して研究を進める必要があると考える。bFGFとこれらのデータは,研究発表(第36回「歯科医学を中心とした総合的な研究を推進する集い(令和2年度)」)を行い,情報交換を行った。
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