本研究課題では、歯周組織で誘導されるHuRおよびエクソソームを介した関節リウマチ増悪機序の解明を目的として研究を行った。今年度は以下の知見を得た。 1)mRNAに結合してmRNAの分解を促進するタンパクとしては、TTP、TIA-1、TIAA、Regnase-1、そしてCCR4-NOT complexが同定されている。また、mRNAの安定化に関与するタンパクは、HuRが報告されている。本研究課題ではHuRに着目している。歯周組織におけるHuRは歯肉上皮培養系で歯周病原細菌で上昇し、IL-6のような炎症性サイトカインのmRNAに結合することで、蛋白レベルでIL-6上昇を引き起こした。また、マウス歯周炎モデルでも同様の傾向を示した。さらにHuR抑制剤を用いた実験で、IL-6の上昇が抑制された。 2)エクソソームは細胞から分泌された脂質二重膜で囲まれた直径40nmから100nmの小胞である。唾液、血液などの体液中に多く局在しており、培養細胞からも産生される。歯肉上皮細胞培養系で、歯周病原細菌の刺激により、放出されるエクソソーム量が上昇することが明らかになった。エクソソーム量に関しては、表層の特異的マーカーCD9、CD63、CD81をWestern blottingで検出することで行った。エクソソームを精製し、無刺激の歯肉上皮細胞培養液に加えたところ、炎症性サイトカインの上昇が認められた。 これらの結果から、実際に歯周炎患者の歯周組織、血清からHuR量を定量し、歯周炎の臨床症状との相関があるか検討する必要があると考えられる。エクソソームに関しても、歯周炎患者の血清から精製し、内容物中のmicroRNAをターゲットに解析する予定である。また、次世代シーケンサーで、内容物の網羅的解析も行う予定である。
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