研究課題/領域番号 |
19K19006
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
鈴木 允文 明海大学, 歯学部, 助教 (60638518)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 歯周炎 / 外傷性咬合 / メカニカルストレス / 骨芽細胞 / TRPV4 |
研究実績の概要 |
歯周炎は歯周病原細菌により引き起こされる感染症であり、炎症が慢性化することで歯槽骨吸収が生じる疾患である。外傷性咬合を伴う歯周炎患者では、局所的な歯槽骨吸収の進行がみられるが、その分子メカニズムには未だ不明な点が多い。本研究では、骨芽細胞に発現するメカニカルストレス応答性イオンチャネルTransient Receptor Potential Vanilloid 4(TRPV4) に着目し、慢性歯周炎存在下での外傷性咬合によって増悪化される歯槽骨破壊の分子メカニズムを解明することで、新たな薬物療法の確立への足掛かりとすることを目的とした。 2019年度は、マウス頭頂骨由来骨芽細胞を用いて、歯周病原細菌Porphyromonas gingivalis(P.g)由来LPSの存在がTRPV4の発現および機能に与える影響について定量RT-PCR法による検討を行った。LPS存在下で培養した骨芽細胞では、TPPV4のmRNA発現量に変化はなかったものの、TRPV4選択的アゴニストである4α-PDD添加後に破骨細胞分化誘導因子であるRANKLのmRNA発現量の上昇が確認された。このことから、P.g由来LPSが引き起こす炎症により、TRPV4の機能が亢進し、破骨細胞分化に影響を及ぼす可能性が示唆された。 今後は、LPS存在下で培養した骨芽細胞に対して、水平振とう器による外傷性咬合を想定したメカニカルストレスの負荷実験を実施する。炎症とメカニカルストレスの関係性に対するTRPV4の役割について、定量RT-PCR法、ウェスタンブロット法、免疫染色法による、更なる詳細な検討を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度はP.g由来LPS存在下で培養した骨芽細胞のTRPV4発現と破骨細胞分化誘導能についての検討を行った。TRPV4選択的アゴニスト4α-PDDの添加により、RANKL発現の亢進がみられたことから、歯周炎存在下での外傷性咬合による歯槽骨吸収に対してTRPV4が関与している可能性が示唆された。さらに水平振とう器を用いたメカニカルストレス負荷実験の予備実験を行っており、外傷性咬合を想定した条件設定を実施している段階である。計画に若干の変更はあるものの、現段階においてはおおむね順調に進行しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、2019年度に実施したアゴニスト添加実験の結果を踏まえ、メカニカルストレス負荷実験による検討を行う。水平振とう器を200rpmで旋回運動させることで生じる流水ストレスを、LPS存在下で培養した骨芽細胞に負荷し、RANKL、OPG、ならびに骨分化マーカーの発現を定量RT-PCR法、ウェスタンブロット法、免疫染色法により評価する。TRPV4の関与についてはアンタゴニストあるいはsiRNAを用いて検討する。さらに、TRPV4が歯槽骨吸収に及ぼす影響に対するTRPV4の関与を調べる目的で、WTマウスとTRPV4KOマウスを用いて歯周炎モデルを作製し、外傷性咬合を負荷する動物実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
既存の実験器具、試薬を利用することが可能であったことから、次年度使用額が生じた。
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