研究課題/領域番号 |
19K19006
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
鈴木 允文 明海大学, 歯学部, 助教 (60638518)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歯周炎 / 外傷性咬合 / メカニカルストレス / 骨芽細胞 / TRPV4 |
研究実績の概要 |
歯周炎は歯周病原細菌により引き起こされる感染症であり、炎症が慢性化することで歯槽骨吸収が生じる疾患である。外傷性咬合を伴う歯周炎患者では、局所的な歯槽骨吸収の進行がみられるが、その分子メカニズムには未だ不明な点が多い。本研究では、骨芽細胞に発現するメカニカルストレス応答性イオンチャネルTransient Receptor Potential Vanilloid 4(TRPV4) に着目し、慢性歯周炎存在下での外傷性咬合によって増悪化される歯槽骨破壊の分子メカニズムを解明することで、新たな薬物療法の確立への足掛かりとすることを目的とした。 2021年度は、2020年度に引き続き小型卓上振とう器を用いてマウス頭頂骨由来骨芽細胞に対して外傷性咬合を想定した旋回振とう刺激を負荷する実験を中心に実施した。ここまでの研究結果から、200rpm、20分間の旋回振とう刺激を間欠的に歯周病原細菌Porphyromonas gingivalis(P.g)由来LPS存在下で培養した細胞に対して与えるとRANKL mRNA発現が有意に上昇することが確認され、同条件下でTRPV4 siRNAを導入した細胞に対して旋回振とう刺激を負荷するとRANKL mRNAの発現上昇が有意に抑制された。このことから、P.g由来LPS存在下でメカニカルストレスを負荷することにより生じる骨吸収にTRPV4が関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、試薬の納品が一部滞り、使用試薬の変更を余儀なくされたことや、学生のオンライン講義への対応などにより、研究活動に大きな支障が生じた。RNA干渉によるTRPV4ノックダウン後のRANKL発現の変化に関する検討までは順調に推移したものの、予定していたTRPV4KOマウスを用いた歯周炎モデル実験については、やや遅れが生じている。すでに野生型マウスを用いた歯周炎モデル作成の予備実験を実施済みであり、2022年度にTRPV4KOマウスを用いた本実験に移行予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、メカニカルストレスとLPSの共存下におけるRANKL発現上昇に対するTRPV4の関与について更なる検討を行う。TRPV4KOマウスの頭頂骨より採取した骨芽細胞に対して200rpm、20分間の旋回振とう刺激を間欠的に負荷し、RANKL mRNA発現に対する影響を定量RT-PCR法によって調べる。さらにTRPV4KOの臼歯に対して絹糸を結紮することで歯周炎モデルを作製し、歯槽骨吸収度やTRPV4、骨関連マーカーの発現の組織学的評価ならびにマイクロCTを用いた形態学的評価を実施する。マイクロCTについては本学共通機器が使用可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により予定していた学会参加が見送られたこと、また使用予定だった試薬の納品の遅れや、生産中止によって試薬の変更を余儀なくされたことにより、次年度使用額が生じた。
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