研究課題/領域番号 |
19K19011
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
伊藤 瑞穂 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (40814611)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 動脈硬化 / 歯周病 / アディポカイン / オメンチン |
研究実績の概要 |
近年、歯周病とメタボリックシンドロームや動脈硬化との関連が大変注目されている。 本研究の目的は、新規アディポカインである「オメンチン」の血中や唾液中の濃度と「歯周病」との関連を解明し、さらには「動脈硬化性疾患」との関連についても明らかにすることにある。 肥満症は高率に糖尿病、脂質異常症、高血圧を合併する生活習慣病の重要な発症基盤である。これらの動脈硬化危険因子が蓄積する事により、重篤な心血管疾患を発症させる。病態の上流には、内蔵脂肪の蓄積があり、糖尿病、脂質異常症、高血圧が集積したメタボリックシンドロームの病態は特に注目されている。脂肪組織は、単にエネルギーを備蓄する臓器であると認識から、アディポカインと総称される生理活性物質を分泌する内分泌臓器でもあるという認識へ変化して生きている。内臓脂肪蓄積状態では、生活習慣病を引き起こす様々なアディポカインの産生が増加し、一方で、生活習慣病に防御的に作用するアディポカインの産生は低下する。 オメンチンは、インテレクチン-1としても知られており、ガラクトフラノースに結合するレクチンの一つである。オメンチン血中濃度は、メタボリックシンドロームの構成因子の数が多いほど減少しており、動脈硬化のサロゲートマーカーである頸動脈内膜中膜複合体厚度(IMT)とも逆相関関係を示す。また、冠動脈疾患や急性冠症候群においてもオメンチン濃度は低下していることが知られている。このように、オメンチン濃度は、動脈硬化関連疾患のバイオマーカーとなりうる可能性が高い。 近年、歯周病とメタボリックシンドロームや動脈硬化と関連が大変注目されており、これらの相互関係に着目し、研究を進めている。これまでに、100人弱のデータ解析にて、オメンチン濃度と、動脈硬化疾患に関する各種評価項目との関連性は、我々のデータで相違ないことを確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究では、オメンチンを標的とし、歯周病を基盤とした動脈硬化の機序解明を目指している。厚生労働省の最新の調査によると、歯肉炎及び歯周疾患の患者数は、前回の調査よりも65万人以上増加しており、特に50才代以降での有病率が高い。これは動脈硬化性疾患の好発年齢とも重複するものであり、社会の高齢化が進むにつれ、歯周病と動脈硬化性疾患の関連死は増加している。したがって、その対策や機序解明は早急に求められている。現時点では、歯周病と歯肉溝浸出液中や血液中のアディポカインとの関連はいくつか報告されているが、歯周病や動脈硬化疾患における唾液中オメンチンとの関連等については全く報告がない。現在我々は、当院内科、歯周病科に来院した対象患者よりデータを取得し、蓄積しているところである。a) 唾液の採取:まずは口腔内を脱イオン水で洗浄する。開眼して軽度頭部を前傾させて座位をとる。60秒毎に5分間、口腔底部に貯留した唾液をtubeに吐き出してもらう。採取後は氷上で管理して、遠心分離にて上皮細胞などを除去して上清を-80℃で保存する b) 口腔内の評価:1.残存歯数、2.齲歯の数、3.軟部組織の病態、4.歯周組織の状態、5.歯周ポケット底部の炎症、6.プラークスコア、7.歯根分岐部病変と動揺性c) 歯周病の重症度:日本歯周病学会の重症度分類に従って、組織破壊の程度として歯槽骨吸収度、アタッチメントレベル、炎症の程度として歯周ポケットの深さを指標に一歯当たりの重症度分類を行い、最も重症な歯を基準として個人の重症度を診断する。d) 動脈硬化の指標:頸動脈内膜中膜複合体厚を最大値、平均値、さらに狭窄率、プラークスコア、拍動係数を測定する。心臓足首血管指数、下腿-上腕血圧比、足趾-上腕血圧比、を測定する。e) 血中、唾液:オメンチン、アディポネクチン含む各種については各ELISAkitを使用して測定する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、新規アディポカインである「オメンチン」の血中と唾液中の濃度と「歯周病」の関連を解明し、さらには、「動脈硬化性疾患」との関連についても明らかにすることにある。これまでに収集できたデータに関して、順次、動脈硬化性疾患の各種病態マーカー、歯周病の指標項目を詳細に解析していく予定である。さらに、オメンチン過剰発現マウスはすでに作成、保持しており、また歯周病マウスモデルに関しては、当研究室にてそのモデル作成が確立しているため、臨床データから得られた結果に関して分子レベルで機序を解明するために、必要な準備は整っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた試薬、キットの購入金額が変更となったため。
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