本研究の目的は、新規アディポカインである「オメンチン」と「歯周病」との関連を解明し、さらには、「唾液中のオメンチン」と「動脈硬化性疾患」との関係についても明らかにする。研究を開始して間もなく、新型コロナウイルス感染症が大流行したため、唾液採取が困難になり、検討検体を血液にしぼり、研究を続行した。 これまでの解析結果では、歯周病パラメーターの一つである歯槽骨吸収度(BL)が重度なほどオメンチンの血中濃度は低いという結果であった。また、現在歯数が20本より多いとそれより少ない群に比べて、有意にアディポネクチンの濃度が高いという結果であった。さらに、プロービング時の出血(BOP)が重度な群は、中等度、軽度な群と比較して、有意にRLPコレステロール値が高いという結果であった。これらの関係は年齢・性別で補正しても、有意性を保つ結果であった。コレステロールとBOPとの関係が確認できたため、他の脂質プロファイルでも検討した結果、LDLコレステロール、HDコレステロールは、BOPとの有意な関連は確認できなかったが、中性脂肪は年齢・性別で補正してもBOPと有意な関連を認めた。脂質プロファイルの中で、補正因子を年齢・性別に加えBMIを追加しても、また、年齢・性別に加え腹囲を追加してもBOPとの有意な関連が確認できたのはRLPコレステロールであった。これらの結果を踏まえ今後さらに解析を進めていき、アディポカインと歯周病と動脈硬化性疾患との関連を検討していく。
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