エクソソームは、直径50~150 nmの細胞外小胞であり、あらゆる細胞から分泌され、その内部にはタンパク質およびmicroRNA等の核酸が内包されており、細胞間コミュニケーションに関与している。また、間葉系幹細胞由来エクソソームは抗炎症活性を持つことが知られているほか、エクソソーム内への有益なmicroRNA等の封入も研究されており、将来的な炎症性疾患や再生療法等への応用が期待されている。本研究の目的は、メカニカルストレス応答性歯根膜細胞エクソソームによる歯周組織における炎症・免疫応答の制御、特にM1/M2マクロファージ極性転換メカニズムを明らかにし、新たな炎症治療薬の開発の基盤を構築するものである。 昨年度までに、歯根膜細胞エクソソーム分泌におけるメカニカルストレスの最適条件の検討および、マウス単球由来細胞株RAW264.7におけるIL-4/13 およびIFN-γ/LPSを用いたマクロファージM1/M2分化モデルの確立が完了したため、今年度はメカニカルストレス受容歯根膜細胞由来エクソソームの機能解析を中心に行った。得られたエクソソームを蛍光色素で標識し、RAW264.7に添加したところ、24時間以内に細胞内に取り込まれることが確認された。また、M2マクロファージに分化したRAW264.7にエクソソームを添加したところ、M2マクロファージマーカーの発現増強がqPCRにて認められた。さらに、M1マクロファージに分化したRAW264.7にエクソソームを添加したところ、M1マーカーの減少およびM2マーカーの増強がqPCRで認められたことに加え、抗炎症性サイトカインであるIL-10の分泌促進が確認された。以上の知見から、メカニカルストレスにより分泌が促進される歯根膜細胞由来エクソソームには抗炎症性物質が内包されている可能性が示唆される。
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