研究課題
本研究は、リバスクラリゼーションで象牙芽細胞が分化しない原因の特定を目指している。当初の計画では、根管内に形成される微小環境、すなわち成長因子・細胞外マトリックス発現が不適当であることで象牙芽細胞分化不全が生じていると推察した。しかしながら、微小環境の影響に先立って、根尖部組織残存量の影響を解析する必要性があると考え、様々な根尖部組織残存量の歯にリバスクラリゼーションを行い、治癒形態を観察した。その結果、根尖部組織残存量に応じて、①:象牙質とオステオデンティンの形成を伴うパターン、②:オステオデンティンのみの形成を伴うパターン、③:オステオデンティンとセメント質様硬組織の形成を伴うパターン、④:セメント質様硬組織と骨様硬組織の形成を伴うパターンの4パターンが生じる事が明らかになった。次に、各パターンでの治癒メカニズムの詳細を検討すべく、複数の週齢ラットによるリバスクラリゼーション実験を行った。根完成歯では④:セメント質様硬組織と骨様硬組織の形成を伴うパターンは起こらないと想定していたが、実際には根完成歯でも認められ、仮説の見直しが必要であった。今年度は正常歯髄とリバスクラリゼーション後の新生歯髄の組織学・免疫組織学的な比較を行った。マッソントリクローム染色の結果や、抗プロコラーゲン1免疫染色の結果からは、コラーゲン産生動態の差異が認められた。またオステオポンティンの局在についても違いが認められた。過去の研究では歯髄腔内における異所性の硬組織形成とオステオポンティンの関係(Y Shigetani et al. Oral Dis. 2016)、オステオポンティンと象牙目細胞分化の関係(K Saito et al. J Dent Res. 2016)が指摘されており、リバスクラリゼーションにおけるコラーゲン産生、オステオポンティン発現について、さらなる研究を行う必要性が示された。
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Australian Endodontic Journal
巻: in press ページ: in press
10.1111/aej.12568