研究課題/領域番号 |
19K19022
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大墨 竜也 新潟大学, 医歯学系, 助教 (30759725)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | バイオフィルム制御 / 薬剤耐性 / 口腔バイオフィルム / バイオフィルム形成関連遺伝子 / sub-MIC / ストレス応答 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,外膜小胞の機能を追求することにより,耐性菌の出現を惹起する抗菌成分に依存したバイオフィルム制御の弊害を克服するべく,非抗菌剤に着目した新規制御法の確立である。本研究では,(1)ストレス応答時の外膜小胞内容物の局在と(2)非抗菌剤による付着抑制メカニズムの解明と2つの課題を設定した。 課題(1)については,複合バイオフィルムモデルにより外膜小胞の機能解析を計画した。申請者が確立した複合バイオフィルムモデルを用いた。抗菌成分による環境ストレス条件下では、外膜小胞は微量なため検出困難であることが判明した。一方で,最小発育阻止濃度以下(sub-MIC)のグルコン酸クロルヘキシジン(CHG)作用時におけるバイオフィルム形成動態の分析を行なった。Sub-MICのCHG作用後,生菌数は増加せずバイオフィルム量とStreptococcus mutansのBF関連遺伝子の転写量が増加した。Sub-MICのCHGはS. mutansのバイオフィルム形成関連遺伝子に影響を与えバイオフィルム形成を促進することが示唆された(Suzuki et al. : Biofouling, 2020)。 課題(2)について,機能性糖脂質ビザンチンは,S. mutansバイオフィルムを易剥離性に変化させることで抗バイオフィルム作用を示した。培養条件のうち,スクロース濃度を変化させたときの S. mutansの抗バイオフィルム効果,各種バイオフィルム形成関連遺伝子の転写量ならびにグルコシルトランスフェラーゼ(GTF)の発現について解析を行った。50μmol/l の機能性糖脂質ビザンチンは口腔粘膜への為害性が低く,殺菌ではない機序でS . mutansのバイオフィルム を剥離した。その機序の一つは,GTFD のタンパク発現を低下させることによるバイオフィルムの構造安定性の低下であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外膜小胞の検出はCBDを利用した系では,微量なため検出困難であることが判明した。 抗菌成分による制御法の限界を示すに十分なデータが,sub-MICのCHX作用時におけるバイオフィルム形成動態の分析により得られた。また、設定した課題のもう一つ、非抗菌剤による付着抑制メカニズムの解明に対しては、機能性糖脂質ビザンチンが殺菌ではなく、バイオフィルムを剥離させやすくする効果が明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、これまでの実験系を応用し、唾液由来のex vivoモデルを用いて機能性糖脂質ビザンチンの効果をさらに検証していく予定である。引き続き共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)による三次元的検索や、分子生物学的手法により解析を行う。 CLSM観察については、これまで使用していた倒立型焦点距離の短さにより,高さのあるバイオフィルム構造を保存したまま高倍率で3次元構築画像を得ることが難しいため現存のZEISS正立型での水浸レンズ利用も考慮する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実施予定であった実験系に変更が生じたために,予定していた試薬等に使用するはずであった予算分が残った。次年度に,修正した計画に沿って使用する予定である。
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