本年度は、令和元年度の研究成果をもとに、バイオリアクターを使用して口腔内と同量のバイオフィルム形成を再現できる培養条件の下で、亜鉛含有ガラス配合セメントのバイオフィルム形成抑制効果を評価した。 亜鉛含有ガラス配合セメントのディスク状硬化試料を作製後、バイオリアクターのフローセル内に固定した。コントロールとして、市販コンポジットレジン(MIフィル、GC)および従来型グラスアイオノマーセメント(フジ VII、GC)の硬化試料を使用した。ヒト唾液から採取した細菌懸濁液をBHI培地で希釈した後、調製した菌液を各試料上に30 mL/hで滴下しながら培養した。また、培養開始0、6、12時間後にスクロース溶液を15分間×3回、計45分間滴下した。24時間培養後、各試料表面に形成されたバイオフィルムにLIVE/DEAD染色を施し、共焦点レーザー顕微鏡にて観察後、得られた三次元画像をもとにバイオフィルムの厚みを算出した。さらに、試料上に形成したバイオフィルムを採取し、コロニーカウント法によりバイオフィルム内の生菌数を定量した。その結果、フジVIIおよびMIフィルに比べて、亜鉛含有ガラス配合セメント上に形成されたバイオフィルムの厚みは有意に低かった。また、亜鉛含有ガラス配合セメント上に形成されたバイオフィルム中の生菌数は、フジVIIおよびMIフィルに比べて有意に少ないことが確認された。 以上より、口腔内と同量のバイオフィルム形成を再現できる培養条件のもとで材料表面のバイオフィルム形成を評価したところ、亜鉛含有ガラス配合セメントは硬化セメント表面でのバイオフィルム形成を抑制することが明らかとなった。
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