研究課題/領域番号 |
19K19028
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
進藤 智 広島大学, 病院(歯), 助教 (90806093)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | γδT細胞 / IL-17A / CCR6 / 歯髄幹細胞 / 硬組織誘導 |
研究実績の概要 |
近年、歯髄組織中に炎症性サイトカインであるInterleukin (IL)-17Aの存在が報告されたが、歯髄炎病変局所においてIL-17AがどのT細胞サブセットから産生されていて、歯髄炎の病態でどのような役割を果たしているかは不明である。本研究では免疫応答に着目した新たな歯髄温存療法を開発するために、歯髄炎病変局所におけるIL-17A陽性CCR6陽性γδT細胞の役割を明らかとし、歯髄幹細胞との相互作用による新規歯髄硬組織誘導機構について解明することを目的に検討を行った。 ヒト歯髄組織中におけるIL-17A陽性γδT細胞の存在を蛍光免疫染色およびフローサイトメトリーによって解析した。その結果、炎症歯髄組織中においてIL-17A陽性γδT細胞が浸潤していることが明らかとなった。また、歯髄組織中のCD3陽性T細胞のうち、その多数がγδT細胞であった。次に、ヒト末梢血由来γδT細胞の増幅実験を行った。ヒト末梢血由来単核球に対して、IL-2およびゾレドロン酸で2週間刺激し、γδT細胞の割合をフローサイトメトリーにて確認した。その結果、90%以上がCD3陽性TCRγδ陽性細胞がであることを確認した。さらに、増幅したγδT細胞の培養上清中に発現しているIL-17AについてELISA法にて検出した。その結果、IL-2およびゾレドロン酸で培養したγδT細胞はIL-17A産生能を有していた。 石灰化誘導培地にて培養したヒト歯髄幹細胞に対してIL-17Aで刺激を行い、硬組織誘導に与える影響をAlizarin red染色にて検討した。その結果、IL-17Aはヒト歯髄幹細胞の石灰化を促進することが明らかとなった。 以上の結果から、ヒト歯髄組織中にIL-17A陽性γδT細胞が浸潤していること、およびIL-17Aがヒト歯髄幹細胞の石灰化を促進することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までにヒト歯髄組織サンプルを用いた解析が順調に進んでいる。その中でIL-17A陽性γδT細胞の存在が明らかとなった。また、末梢血由来単核球からγδT細胞を増幅することにも成功し、IL-17A産生能について確認することができた。さらにIL-17Aがヒト歯髄幹細胞の石灰化を促進することも明らかとなった。 これらの結果は当初予定していた研究計画通り、概ね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、ヒトγδT細胞とヒト歯髄幹細胞の相互作用について検討する。すなわち、ヒトγδT細胞の培養上清中のIL-17Aがヒト歯髄幹細胞の石灰化を促進しうるか、抗IL-17A中和抗体を用いて検討する。また、ヒト歯髄幹細胞の培養上清がヒトγδT細胞の活性化あるいはサイトカイン産生に与える影響を検討する。さらに歯髄組織中に浸潤しているγδT細胞においてCCR6発現の有無について免疫染色を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画実施にあたり、臨床サンプルを得るための広島大学疫学研究倫理審査委員会への申請と承認に予定より時間がかかってしまった。そのため、予定していた実験計画が多少前後してしまったため、使用予定予算に変更が生じた。次年度使用額については当初予定していた計画通り使用予定であるが、現在までに概ね順調に研究が進展していることから、研究計画の追加等に伴って使用することも検討している。
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