研究課題
近年、歯髄組織中に炎症性サイトカインであるInterleukin (IL)-17Aの存在が報告されたが、歯髄炎病変局所においてIL-17AがどのT細胞サブセットから産生されていて、歯髄炎の病態でどのような役割を果たしているかは不明である。本研究では免疫応答に着目した新たな歯髄温存療法を開発するために、歯髄炎病変局所におけるIL-17A陽性CCR6陽性γδT細胞の役割を明らかとし、歯髄幹細胞との相互作用による新規歯髄硬組織誘導機構について解明することを目的に検討を行った。これまでに、炎症歯髄組織中においてIL17A陽性γδT細胞が浸潤していることが明らかとなった。また、歯髄組織中のCD3陽性T細胞のうち、その多数がγδT細胞であった。さらに、増幅したヒト末梢血由来γδT細胞はIL-17A産生能を有していた。リコンビナントIL-17Aはヒト歯髄幹細胞の石灰化を促進したが、IL-17Aを含む、γδT細胞培養上清はヒト歯髄幹細胞の石灰化を促進しなかった。以上の結果から、ヒト歯髄組織中にIL-17A陽性γδT細胞が浸潤していること、およびIL-17Aがヒト歯髄幹細胞の石灰化を促進することが明らかとなった。しかし、IL-17Aを含むγδT細胞培養上清がヒト歯髄幹細胞の石灰化を促進しなかったことから、γδT細胞培養上清中には歯髄幹細胞の石灰化を阻害する因子が含まれている可能性が示唆された。今後は、培養上清中に含まれる石灰化阻害因子を同定し、その因子とIL-17Aの相互作用に着目した実験を行う予定であるが、海外留学による研究中断となるため帰国後に研究再開予定である。
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Cell Biology International
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10.1002/cbin.11466