研究課題/領域番号 |
19K19031
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
濱野 さゆり 九州大学, 歯学研究院, 助教 (40757978)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 歯根膜幹細胞 / FBN2 |
研究実績の概要 |
ヒト歯根膜組織に存在する幹細胞は、歯周組織再生において中心的役割を果たす。しかしながら、それらは希少な細胞集団であるため、臨床応用が難しい。申請者はiPS細胞が持つ高い自己増殖能と多分化能に着目し、ヒト歯根膜細胞(HPDLC)の細胞外マトリックス(ECM)を用いることで、iPS細胞を歯根膜幹細胞様細胞へ分化誘導することに成功した。一方で、HPDLCのECMを用いた分化誘導法は、感染等の問題を含んでおり臨床応用が困難である。そこで申請者は、HPDLCに由来するECMについて網羅的解析を行い、歯根膜幹細胞誘導因子の有力な候補としてFibrillin-2(FBN2)に着目した。本研究では、iPS細胞から安全で簡便な歯根膜幹細胞様細胞への分化誘導法の確立を目的とし、FBN2を用いて分化誘導した歯根膜幹細胞様細胞の表現型解析、およびその歯周組織再生能を明確にすることとした。そこで、申請者はまずFBN2のベクター作製に着手した。作製されたベクターは、FBN2タンパクの発現がほとんどないものであったため、次にFBN2のリコンビナントタンパク上にてiPS細胞を培養し、そこで得られた細胞の歯根膜幹細胞特性についての解析を行った。ここで得られた細胞は、歯根膜幹細胞の特性を持っていないことが明らかとなった。FBN2は他のECMと結合して働く因子として有名であるため、他の因子と複合することで、iPS細胞から歯根膜幹細胞を誘導できるのではないかと考え、現在は免疫沈降を用いてFBN2と結合したタンパクの同定を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在の研究進捗状況は、申請時の予定よりやや遅れていると考えられる。当初の予定では、FBN2の発現ベクターを作製し、SFに導入して、得られた細胞の歯根膜幹細胞特性について検討する予定であったが、発現ベクターの作製がうまくいかなかった。そのため、FBN2の発現ベクターについては、現在再作製中である。 FBN2の歯根膜幹細胞誘導能については、FBN2の過剰発現実験にて確認する予定となっていたが、本年ではベクター作製がうまくいかなかった。そこで、申請者は先にリコンビナントタンパクを用いた実験を行い、FBN2の歯根膜幹細胞誘導能について明らかにすることとした。FBN2を100~1000 ug/mlの濃度にて培養皿上にコーティングし、その上にiPS細胞由来神経堤細胞を播種し、2週間培養した。ここで得られた細胞は、歯根膜幹細胞様の特性を持っていないことが明らかとなった。このことから、FBN2単独ではiPS細胞から歯根膜幹細胞への誘導能は持っていないことが分かった。FBN2は他のECMと結合して働くECMとして有名であるため、歯根膜幹細胞誘導能を持つ歯根膜細胞のECMの中でFBN2と結合して働くタンパクを同定することとした。現在、免疫沈降ならびに質量分析を用いてFBN2の結合タンパクを同定しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、FBN2のベクターを再作製し、iPS細胞から歯根膜幹細胞への誘導におけるFBN2の役割について詳細に解析を行う予定である。また、FBN2と結合して働いているタンパクを同定し、そのタンパクとFBN2を複合して、iPS細胞から歯根膜幹細胞を誘導する方法について明らかにする予定である。また、誘導できた細胞は、歯周組織傷害モデルに移植し、生体内での歯周組織再生能についても検討することとしている。この方法が確立できれば、感染等の問題が解決でき、臨床応用へとつながる歯根膜幹細胞を樹立できると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年はFBN2の発現ベクターの作製ができておらず、細胞への遺伝子導入試薬を使用しなかったため、繰り越し金が発生したと思われる。2020年度には発現ベクターを再作製して、遺伝子導入予定である。
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