研究課題/領域番号 |
19K19032
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
御手洗 裕美 九州大学, 大学病院, 助教 (60801660)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヒト歯根膜細胞 / α-SMA / transgelin / コラーゲン線維形成 / 石灰化抑制 |
研究実績の概要 |
TGF-βシグナルの下流で発現が促進されることが知られているα-SMAに着目し、ヒト歯根膜細胞におけるその機能解析を行うことで、α-SMAの歯根膜組織維持への関与を検討することとした。 TGF-β1の歯根膜関連因子発現上昇ならびにコラーゲン線維形成能に、α-SMAが関与するか検証するため、定量的RT-PCR法ならびにピクロシリウスレッド染色を用いた解析を行った。siRNAによりα-SMAをノックダウンしたヒト歯根膜細胞株において、TGF-β1刺激で発現が上昇する歯根膜関連因子(Collagen-1、Fibrillin-1、Periostin)の発現が抑制され、またTGF-β1刺激により亢進するコラーゲン線維形成能が抑制される傾向を認めた。以上の結果から、ヒト歯根膜細胞におけるTGF-β1による歯根膜細胞関連因子発現ならびにコラーゲン形成能に、α-SMAが関与する可能性が示唆された。 一方で、siRNAによりα-SMAをノックダウンしたヒト歯根膜細胞株における石灰化関連因子の発現を定量的RT-PCR法で解析したところ、ALPL、OSX、OCNの発現の上昇傾向を認めた。このことからα-SMAが歯根膜組織の石灰化抑制にも関与している可能性が示唆された。 さらに、細胞外基質フィブロネクチン(FN)上にヒト歯根膜細胞株を培養し、定量的RT-PCR法においてα-SMA発現制御に関連しているtransgelinの遺伝子発現を解析したところ、培養24時間後にtransgelinの有意な発現上昇を認めた。そこでFNコーティングディッシュを用いて細胞接着実験を行ったところ、siRNAによりtransgelinをノックダウンしたヒト歯根膜細胞株において、細胞接着の有意な減少を認めた。このことから、transgelinが細胞外基質への接着に関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初はプライマリーのヒト歯根膜細胞を複数樹立し、実験を行う予定であったが、実験に使用可能な細胞を樹立できなかった。そこで、すでに樹立していた複数のヒト歯根膜細胞株における、歯根膜細胞関連因子の発現を半定量的RT-PCR法を用いて解析して比較し、歯根膜細胞関連因子の発現が強いヒト歯根膜細胞株(2-33)を用いて実験を行うこととした。また、本来α-SMAの発現を制御する、TGFシグナル関連因子としてのtransgelinの機能解析を行う予定であったが、transgelinが細胞外基質との接着に関連する結果が得られたことから、予定とは異なる実験を追加した。以上のように、使用する細胞株を当初予定から変更したこと、予定とは異なる実験を行ったことから、本研究課題の進捗はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
TGF-β1刺激時にTGF-βシグナル因子のsiRNAもしくは阻害剤を同時に添加し、TGF-β1によるα-SMA発現上昇関連シグナル因子解析を行う。また、予備実験において、transgelinはTGF-β1刺激によって核内に移行する可能性が考えられるため、TGF-βシグナルにおける転写因子との関連についても検討する。TGF-β1存在下でtransgelinが核内に移行し、転写関連因子と共にα-SMA発現に与える影響を明らかにする。さらに、transgelinの細胞外基質との接着機能に関しても解析を進めることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたシグナル解析実験まで行わなかったため、予定していた金額を使用しなかった。そのため、次年度に繰り越し、シグナル解析を行うための試薬購入に使用する予定である。
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