研究実績の概要 |
Streptococcus mutans(以下 S. mutans)はう蝕原性細菌であり、菌体表層タンパク質の局在に関与する酵素のひとつとしてSortaseという酵素を保有している。本研究では、Sortase依存的に菌体表層へ局在化する6種類のタンパク(WapA, FruA, SpaP, WapE, GbpC, DexA)の網羅的解析を行い、歯科材料表面の定着に関与するタンパクを同定し、う蝕予防に利用することを目的とする。 最初に、Sortase遺伝子、その他表層タンパク6種の計7種類について遺伝子欠損株を作製した。S. mutans実験株UA159を親株とし、相同組み換えであるダブルクロスオーバー法にて、遺伝子欠損株を作製した。これら作製した欠損株を用いて、性状解析を行った。 第一に、初期付着能の検証を行った。付着試料としては、細胞付着用プラスチック製カバースリップを用いた。試料に唾液ペリクルを付着させ、菌液に1時間浸漬し、付着した菌数をコロニー計測法にて測定した。検証の結果、Sortase遺伝子欠損株、SpaP遺伝子欠損株では野生株と比較して付着能の大幅な減少を認め、GbpC遺伝子欠損株、DexA遺伝子欠損株についても減少を認めた。 第二に、唾液凝集能の検証を行った。唾液と菌液を攪拌し、濁度の変化を分光光度計にて測定した。 検証の結果、Sortase遺伝子欠損株、SpaP遺伝子欠損株において、野生株と比較し凝集能の有意な減少を認めた。 第三に、プラーク形成の中心菌であるFusobacterium nucleatumとの共凝集能の検証を行った。2種の菌液を攪拌し、濁度の変化を分光光度計にて測定した。検証の結果、野生株と各遺伝子欠損株の間に有為差は認めなかった。
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