研究実績の概要 |
Streptococcus mutansはう蝕原性細菌であり、菌体表層タンパク質の局在に関与する酵素としてSortaseを保有している。本研究では、Sortase依存的に菌体表層へ局在化する6種類のタンパク(WapA, FruA, SpaP, WapE, GbpC, DexA)の網羅的解析を行い、歯科材料表面の定着に関与するタンパクを同定し、う蝕予防に利用することを目的とする。 Sortase遺伝子、その他表層タンパク6種の計7種類について遺伝子欠損株を作製し、性状解析を進めている。前年度までに行った初期付着能の検証、唾液凝集能の検証ではSortase関連遺伝子欠損株と野生株の間に有為な差を認めた。本年は口腔細菌に対する共凝集能、菌体表層の疎水性について検証した。 S. mutans野生株のいくつかの口腔細菌に対する共凝集能を調べたところ、Fusobacterium nucleatum、Porphyromonas gingivalisに対しては共凝集が認められた。続いて各Sortase関連遺伝子欠損株について検証を行ったところ、F. nucleatumとの共凝集は、srtA欠損株で共凝集能の低下、wapA欠損株でわずかな低下を認めた。spaP欠損株では反応後1時間経過地点では有意な低下を示したが、終了時には親株とほぼ同等の値を示した。P. gingivarisとの共凝集では、srtA欠損株で共凝集能の低下を認めたが、6つの欠損株の中では共凝集能の阻害が認められたものはなく、反対にspaP、wapE欠損株ではわずかに共凝集が促進された。 菌体表層の疎水性については、srtA欠損株、spaP欠損株、gbpC欠損株の疎水性が減少した。細菌の疎水領域は細菌の付着に影響を与える因子とされ、この結果は先の初期付着能の検証結果を裏付けるものとなった。
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