歯周病は歯周病原細菌による慢性炎症性疾患であり、歯周炎で認められる歯周ポケットは、歯肉上皮細胞の細胞間接着機構の破綻による細胞間断裂の結果、内縁上皮の潰瘍形成と深化拡大、さらに好中球の動員増に伴う炎症カスケードの進行によって組織破壊が起こることで形成される。自然免疫において重要な役割を果たしている好中球は、病原体を排除するために活性化すると感染防御のために種々の活性酸素種を供給するが、過剰な活性酸素は宿主障害をもたらす酸化ストレスとなる。一方、転写因子Nrf2(NF-E2 related factor 2)は細胞の酸化ストレス耐性に関わることが知られている。非ストレス下の細胞ではNrf2は核内に移行できないが、細胞が酸化ストレスなどに曝されるとNrf2は核内に移行し、各種炎症性サイトカイン産生を抑制する分子を発現して抗炎症および抗酸化効果に寄与する。しかし、歯周組織において生体防御を最前線で担う歯肉上皮におけるNrf2の機能については十分に解明されていない。 そこで本研究では、酸化ストレス制御因子Nrf2が歯肉上皮の細胞間接着装置に及ぼす影響を評価するため、研究機関を通じてヒト歯肉上皮細胞株(Ca9-22cell)および樹立したマウス由来不死化接合上皮細胞(JE-1)を種々の濃度の過酸化水素(H2O2)で刺激して酸化ストレスを誘導し、Nrf2活性化量、各種細胞接着分子の発現量の評価を行った。 最終年度にあたる今年度は、JE-1の酸化ストレス耐性を評価するため、種々の濃度の過酸化水素(H2O2)で刺激して酸化ストレスを誘導し、細胞障害性及び細胞生存率を評価することでJE-1に対する酸化ストレス刺激の適正化を行った。H2O2濃度依存的に細胞生存率が低下したが、細胞障害性についてはデータが安定せず、H2O2による酸化ストレス刺激の適正化には至らなかった。
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