研究実績の概要 |
障害者は口腔清掃の重要性が理解できないことや四肢体幹障害などにより、自己での口腔管理が困難なため歯周病を発症しやすく、炎症性歯槽骨破壊のリスクが非常に高い。従って、物理的なプラークコントロールでなく、化学的に歯槽骨破壊を抑制する薬物療法の開発は重要課題の1つである。本研究では、現在広く用いられている骨吸収抑制薬である抗RANKL抗体およびビスホスホネート(BP)製剤が、細菌感染に起因する炎症性骨破壊に及ぼす影響について解析し、効率的に局所での薬剤効果を高める方法を検討することとした。また、骨吸収抑制薬の効果的な投与のタイミングや、長期的な薬効の持続時間の検討などもさらなる課題として挙げられる。 研究1年目は、炎症性骨破壊が生じた後に歯槽骨修復を目的して骨吸収抑制薬を投与した。8週齢雄性マウスの右側上顎第2臼歯に絹糸を結紮し、炎症性歯周病モデルを作成した。3週後、歯周病状態を確認し、抗マウスRANKL抗体(OYC1; 5mg/kg)を皮下投与した。1週間隔で麻酔下にてmicroCT撮影し、歯槽骨の回復程度を解析した。また、1週間隔でOYC1を4週連続投与した。その結果、1回投与では破壊された歯槽骨の回復は見られなかった。4週連続投与でも、回復程度は軽度であった。 研究2年目は、マウス大腿骨に0.8mmの歯科用ランドバーにて骨髄に穿通させて骨欠損モデルとした。抗マウスRANKL抗体(OYC1; 5mg/kg)と比較としてゾレドロネート(0.1, 1.0, 3.0 mg/kg)を腹腔内投与した。1週間隔で麻酔下にてmicroCT撮影し、骨の回復程度を解析した。抗RANKL抗体を投与したマウスは骨修復程度は低かったが、ゾレドロネート投与したマウスでは骨修復が促進していた。
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