研究課題
本研究は歯周病の無痛性進行のメカニズム解明するとともに、痛みの反応経路を正常化することで、歯周病による歯槽骨吸収を起こさない経路を探索することを目的として行われた。我々は主な歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalis (P.g.) に着目し、マウス実験歯周炎モデルを作成し、研究を行った。実験モデルマウスを用いて、歯周組織局所の反応を行動生理学的、形態学的および組織学的に検証することが本研究の目的であり、令和1年度はマウス動物実験モデルを確立した。7週齢、C57BL/6のマウスにマイクロスコープ下で上顎臼歯に5-0絹糸を結紮し、その後P.g.菌を播種し、モデルマウスを作成した。未処置をコントロールとし、結紮後1日おきに14日間,浅麻酔下にて上顎第二大臼歯歯頚部歯肉にelectronic von Freyを用いて機械刺激を行い, 逃避反射閾値を測定した。14日後に炭酸ガスによる安楽死を施行し,通法通りにパラフィン包埋切片を作製し, 組織学的な観察を行った。また、歯肉組織サンプルを採取し、サンプル中のフリーラジカルの産生量を ELISA 法を用いて測定を行った。結果としては、コントロールと比較して、逃避反射閾値に優位差を認めなかった。これにより、モデルマウスが機械痛覚過敏を起こさない、すなわち痛くない歯周炎を模倣したモデルであることが確認された。歯肉組織サンプル中のフリーラジカルの産生量は、サンプル間の差が大きく、有意な差は得られなかった。マウスの歯肉は小さいため、サンプル量のばらつき、もしくはサンプル採取時の条件が測定結果のばらつきの原因と考えられる。
3: やや遅れている
マウス上顎臼歯に絹糸を結紮し、P.g.菌を播種し、モデルマウスを作成後、逃避反射閾値の測定を行った。測定の結果、モデルマウスが機械痛覚過敏を起こさない、すなわち痛くない歯周炎を模倣したモデルであることが確認させれた。しかし、確認後測定機材のトラブルにより、測定機器を変更することが余儀なくされた。新規測定機材の調整に時間が取られたものの、現在は問題なく測定できる環境が再確立された。その後、歯肉サンプル中のフリーラジカルの産生量を ELISA 法を用いて測定を行ったが、サンプル間にばらつきが多く、定量方法の改善が求められる。このような点から、「やや遅れている」と判断される。マウスの歯肉は小さいため、サンプル量のばらつき、もしくはサンプル採取時の条件が測定結果のばらつきの原因と考えられる。このため、採取条件の均一化を行い、検証を行う必要がある。
マウス歯肉サンプルの量のばらつき、もしくはサンプル採取時の条件が測定結果のばらつきを抑えるため、採取条件の均一化を行い、肉サンプル中のフリーラジカルの産生量を ELISA 法を用いて測定を行う。並行して、①組織切片を作成、HE染色および酒石酸耐性酸ホスファターゼ (TRAP) 染色を行い、多核巨細胞ならびに破骨細胞を同定する。②好中球などのフリーラジカル産生細胞の発現を調べるために免疫染色を行い、検討を行う。③フリーラジカル産生の経路の上流のブロッカーを投与し行動生理学的解析を行う。④ブロッカーを投与、非投与下で骨欠損の変化を継時的にマイクロ CT を用いて観察し、歯周炎条件下での好中球、フリーラジカルの関与について検討を行う。⑤さらに可能であれば、ブロッカー投与時の三叉神経節における神経細胞体の活性を、パッチクランプ法を用いて電気生理学的に解析する。
理由:令和1年度は歯周炎モデルマウスの確立を行った。令和1年度は、フリーラジカル産生の経路の上流のブロッカーを投与し、行動生理学的、免疫組織学的解析を行う計画であったが、機材トラブルなどのために行うことが出来なかった。また、国内外の学会に参加し、情報収集を行う予定であったが実施しなかったため、未使用額が生じた。使用計画:令和1年度の繰越金と令和2年度の助成金を併せて、令和1年度に引き続き、歯周炎モデルマウスを用い、フリーラジカル産生の経路の上流のブロッカーを投与し、行動生理学的、免疫組織学的解析を行うとともに、同条件下でマイクロCTを用いて骨欠損の変化を継時的に観察するため、および、上記実験の成果発表のための学会参加費及び旅費等として使用する予定である。
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