研究課題/領域番号 |
19K19039
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
能田 佳祐 日本大学, 松戸歯学部, 専修医 (30822621)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 歯周病 / アメロチン / microRNA / 接合上皮 |
研究実績の概要 |
本研究は、炎症性サイトカインのTNF-αまたはIL-1βとmiRNA発現ベクターを培養細胞に導入し、炎症時の細胞環境を再現することで、歯肉接合上皮に特異的に発現するタンパク質であるアメロチン(AMTN)遺伝子の発現機構におけるmiR-150、miR-223およびmiR-200bの影響を解析し、炎症時の接合上皮におけるその複雑な動態を理解することを目的としている。miRNA発現ベクターを歯肉上皮細胞に導入し、TNF-αで刺激後にRNAを抽出し、AMTN mRNA量をリアルタイムPCRで定量 的に確認したところ、AMTN mRNA発現量は部分的に抑制された。またWestern blot法にてAMTNタンパク質量の変化を解析したところ、miRNA発現ベクターを導入した場合、AMTNタンパク質量は部分的に抑制されていた。マウスAMTN遺伝子の3’ 非翻訳領域(UTR)へのmiR-150、miR-223、miR-200bの結合を検証するため、マウス歯肉上皮細胞にmiRNA発現ベクターとヒトAMTN遺伝子3’-UTRを挿入したコンストラクトを導入し、ルシフェラーゼアッセイを行い、AMTN遺伝子の転写活性に対するmiRNAの影響を解析すると、AMTN遺伝子の転写活性はmiRNA発現ベクターを導入した場合、部分的に抑制された。現在、炎症サイトカインであるTNF-αで刺激した時のシグナル伝達経路であるMAPキナーゼ系のシグナル因子内におけるmiR-150、miR-223、miR-200bの影響を解析しており、miRNAがAMTN遺伝子の発現機構に直接的・間接的に影響を及ぼしている可能性を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究ではmicroRNAが接合上皮に特異的なタンパク質であるAMTNの遺伝子発現にどう影響するかを解析することで、炎症時の接合上皮におけるその複雑な動態を理解することを目的とし、歯周病発症機序を解き明かす一端としている。これまでにmiRNA発現ベクターを導入した培養細胞に対して炎症性サイトカインのTNF-αを用い、炎症時の細胞環境を再現することで、炎症性歯肉で発現が増加するmiR-150、miR-223およびmiR-200bによるAMTN遺伝子発現調節機構を解明してきた。それらの解析結果からmiRNAがAMTN遺伝子の発現を部分的に抑制していることが考えられた。接合上皮は歯周組織において防御機構としての働きがあるとされており、miRNAはそこに特異的に発現するAMTNの発現を調節している可能性を見出すことができた。また、研究成果を学会で発表し、様々な分野の研究者と議論をかわしたり、助言を頂く事ができた。以上のことから本研究は計画以上に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
miRNAは標的遺伝子の3’-UTRに結合し、遺伝子発現を抑制するが、マウスAMTN遺伝子の3’-UTRにmiR-150、miR-223およびmiR-200bの結合部位がある可能性があることがTargetScanにて見出され、検証を行ったところ、miRNAはAMTNの遺伝子発現を部分的に抑制している事が考えられた。このことからmiRNAはAMTN mRNAに直接結合し、遺伝子発現を調節している事が示唆された。 また、細胞内シグナル伝達経路中にもmiRNAの標的遺伝子となり得る因子が存在する可能性がある事がわかったため、今後はAMTN遺伝子転写に関与する細胞内シグナル伝達経路についても解析を行い、miRNAがAMTN遺伝子発現に間接的にも関与している可能性について検索していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞培養に使用する消耗品を購入するため、仲介業者に見積書を作成してもらい、メーカーに発注をかけたが、コロナウイルスの影響で納品する事が出来なかったため次年度使用額が生じた。 次年度にメーカーからの納品が可能になれば改めて購入する予定である。
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