研究課題/領域番号 |
19K19040
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
前野 雅彦 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (20736334)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 接着タンパク質 / コラーゲン自己生成ペプチド / 歯ー歯肉間接着 / 光機能化 |
研究実績の概要 |
硬組織-軟組織(歯と歯肉)間の結合喪失は、その治癒の困難さから細菌の再侵入を許しやすく、最終的には支持組織の喪失によって歯の抜去に至るため、健全な天然歯列の維持のためには大きな課題である。本研究は、硬組織-軟組織の間にBio-adhesionを生成し、健全な天然歯列を回復することで、患者のQOLを改善するための手法を確立することを目的とする。そのために、欠損部のスペースメイキングや治癒促進に主眼を置いた、歯肉・骨の生体治癒機能のみに頼る従前の方法と異なり、歯質への化学的処理による結合腕を生成し、接着に役立てる方法を採用する。手法としては、水分存在下での耐久性を有するだけでなく、有機・無機・金属全てへの接着性を有するMussel inspired Adhesive Proteins (MAPs)を介したコラーゲン自己生成ペプチドの歯質への定着を用いる。先ず、in vitroにおいて歯質側に歯肉との接着に役立つ結合腕を生成する手法を確立することを目指し、MAPsの歯質その他への定着、および歯質上に定着させたMAPsへのコラーゲン自己生成型ペプチドの結合のためのパイロットスタディを行った。 初年度は、MAPs溶液への浸漬によって、歯質切片および歯科材料への定着は確認された。また、コラーゲン自己生成型ペプチドについても結合を行うことができた。しかしながら、MAPsおよびペプチドの定着量・範囲は最終的に十分な硬組織-軟組織間接着を達成するにはやや乏しく、定着手法の改善が必要であることが判明した。 本年度は、コロナ禍の影響によって、研究環境に多大な制限を受けたこともあり、研究の進行は困難を極めた。その中で、定着手法改善のために光機能化採用の検討を行い、ポジティブな結果が得られつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度の成果として、MAPs溶液への浸漬によって、歯質切片および歯科材料への定着は確認されたものの、定着量・範囲は十分とは言えないものであった。これを受け、十分な硬組織-軟組織間接着を達成するための、定着手法の改善を模索した。光機能化という有望な手段を発見したものの、コロナ禍の影響によって、研究環境に多大な制限を受けた。また、社会的にも、学会の中止・オンライン化や移動の制限が行われ、研究を計画通りに進めることが叶わなかった。したがって、当初の予定よりも大幅に遅れた状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の成果として、MAPs溶液への浸漬によって、歯質切片および歯科材料への定着は確認されたものの、定着量・範囲は十分とは言えないものであった。これを受け、十分な硬組織-軟組織間接着を達成するための、定着手法の改善を模索した。その結果、多様な被着体に対して接着改善効果を得ることができる光機能化という有望な手段を発見した。この手法を、研究目的達成のために、どのような形で活用していくかの検討を行い、最適化していく。手順としては、試料・試薬を調達の上で、光機能化によって十分な改善効果を発揮させるための最適条件を模索する。さらに、確定した条件を基に、十分な硬組織-軟組織間接着を達成するために適した定着手法の改善を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に余剰試料・試薬を用いて行った研究の結果、MAPsおよびペプチドの定着量・範囲は十分とは言えないものであったため、適した定着手法の改善を目的として光機能化の検討を行った。事前に余剰材料と実験機器の先行貸与を受け、コストをかけずに有用性の予備的検討を行い、有意義な結果を得た。本来であればコストを投じ、試料の調達および実験機器の本格貸与を受けて実験を進める予定であったが、コロナ禍の多大な影響を受け、コスト発生のフェーズが後倒しとなっている。
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