研究課題/領域番号 |
19K19042
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
堀部 寛治 松本歯科大学, 歯学部, 助教 (70733509)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 歯槽骨 / 骨再生 / 幹細胞 / 細胞系譜解析 |
研究実績の概要 |
歯周病などによって喪失した歯槽骨の再生は、現代の歯科医療における最終的な治療目標の一つである。本研究の目的は、抜歯および歯周病後の歯槽骨再生に寄与する組織幹細胞をそれぞれ同定し、その特性を明らかとすることである。研究手法としては、歯槽骨再生に関わると考えられる細胞を標識したマウスを用いた細胞系譜解析実験を行う。抜歯窩治癒、歯周病後のFGF2局所投与、それぞれにおける再生骨組織中の標識細胞の局在から、歯槽骨再生を行う細胞を同定する。 骨形成の解析には、骨芽細胞の分化マーカーであるOsterix (Osx)陽性細胞および、その子孫細胞がタモキシフェン投与で赤色蛍光タンパク質Tomatoで標識化されるOsx-Creert2;tdTomatoマウスを使用した。 抜歯窩の骨形成では、6週齢のマウスの上顎第一臼歯を抜去し、一週間後に解析を行った。歯周病後の骨再生では、8週齢マウスの上顎第二臼歯に絹糸を結紮により歯周病を誘発し、歯槽骨吸収がなされた状態で、骨吸収部に歯周組織再生療法に使用されるFGF2製剤を塗布し、4週後にサンプルを回収し、解析を行った。 抜歯モデル、歯周病後組織再生モデル、共にマイクロCT像で骨新生が確認された。それぞれのサンプルの凍結切片を共焦点レーザー顕微鏡で新生骨部の細胞系譜解析を行った。その結果、新生骨の周囲と、その近傍の歯根膜細胞でTomato陽性が認められた。この結果から、歯根膜組織に存在するOsx陽性細胞が抜歯窩および歯周組織の骨再生に寄与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回の実験にあたり、Osx-Creert2マウスおよびtdTomatoマウスの実験使用のためにマウス作成者とのMTA締結のための事務手続き、その後の交配によるOsx-Creert2;tdTomatoマウスの安定的な供給状態を整えるために時間を要した。 また、抜歯窩モデルの実験にあたり、当初は8週齢以降の成熟したマウスを使う予定であったが、その週齢のマウスの歯根部は肥厚したセメント質の存在により抜歯窩に歯根の先端が残存し、正確な骨形成を評価することができなかった。そのため、当初の実験計画よりも若齢である6週齢のセメント質形成が未成熟なマウスの使用に実験計画を変更した。 これらの遺伝子改変マウスを使用するための環境作りや、実験計画変更のための条件検討のために当初、策定した予定よりも進捗はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
細胞系譜解析は、タモキシフェン投与後のOsx陽性の細胞およびその子孫細胞が標識されるが、令和元年度に行った実験はタモキシフェン投与の翌日に外科処置を行っているので、新生骨の形成に歯根膜幹細胞以外に、血流を介して抜歯窩、歯周組織に遊走してきた他組織由来の間葉系幹細胞が寄与している可能性も考えられる。そのため、in vivoでは、タモキシフェン投与時期をずらした実験を行い、より正確に骨新生に寄与する細胞を同定する必要がある。 in vivoでの実験が完了次第、FACSによる新生骨形成に寄与する細胞を回収し、培養系で解析を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】受領した金額は予定通りにほぼ全額を使用したが、30円のみ残ってしまった。 【使用計画】消耗品の購入に使用する予定である。
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