歯周病等で喪失した歯槽骨の再生は、現代の歯科医療における最終的な治療目標の一つである。本研究の目的は、抜歯および歯周病後の歯槽骨再生に寄与する組織幹細胞をそれぞれ同定することである。研究手法は、歯槽骨再生に関わると考えられる細胞を標識したマウスを用いた細胞系譜解析実験を行う。抜歯窩の自然治癒および歯周病後のFGF2局所投与による歯周組織再生、それぞれにおける再生骨組織中の標識細胞の局在から、歯槽骨再生を行う細胞を同定する。 骨形成の解析には、タモキシフェン投与により、骨芽細胞分化マーカーOsterix (Osx)陽性細胞と、その子孫細胞で赤色蛍光タンパク質Tomatoが発現するOsx-Creert2;tdTomatoマウスを用いて行った。 抜歯窩の骨形成では、6週齢のマウスの上顎第一臼歯を抜去し、マイクロCT解析で抜歯窩骨新生が認められた抜歯一週間後で解析を行った。歯周病後の骨再生では、8週齢マウスの上顎第二臼歯に絹糸を結紮により歯周病を誘発し、歯槽骨吸収がなされた状態で、骨吸収部に歯周組織再生療法に使用されるFGF2製剤を塗布し、4週後にサンプルを回収し、解析を行った。 抜歯モデル、歯周病後組織再生モデル、それぞれのサンプルの凍結切片を共焦点レーザー顕微鏡で新生骨部の細胞系譜解析を行った。その結果、新生骨の周囲と、その近傍の歯根膜細胞でTomato陽性が認められた。この結果から、歯根膜組織に存在するOsx陽性細胞が抜歯窩および歯周組織の骨再生に寄与することが示唆された。
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