研究課題/領域番号 |
19K19045
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中川 泰宏 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (90831264)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 骨粗鬆症 / IL2 / アポトーシス細胞 / ホスファチジルセリン / 免疫寛容 / 高分子ミセル / リウマチ |
研究実績の概要 |
関節リウマチ(RA)は近年よく見られる自己免疫疾患であり、発症部位での軟骨や骨の粗鬆化に加え、全身性の骨粗鬆症を誘発することが知られている。RAでは炎症部位で産生されるTNF-alphaやIL-10などの炎症性サイトカインが破骨細胞の分化成熟を誘導することで骨・関節の破壊が進行する。加えてこれらの炎症性サイトカインは血流によって全身に行き渡るため、RA発症部位以外での骨組織の粗鬆化が誘引される。これらの炎症性サイトカイン産生・破骨細胞の分化誘導を担っているのがそれぞれ炎症性の発現型に分極したM1型マクロファージと、Th17やTeff型のT細胞である。今日のリウマチの治療法は、抗炎症性の低分子薬による治療か、抗体を用いた炎症性サイトカイン阻害の二種である。これらの治療法では病巣の根本治療は難しく、患者の体・金銭的負担が非常に大きい。以上を踏まえて申請者は、恒常的な免疫活性状態にある免疫細胞を抑制型への分極を誘導する技術を開発することで、リウマチの根本治療と骨粗鬆症回復の大きな助けになると予想した。本研究ではこれを達成するための材料として、アポトーシス細胞が有する抗炎症活性を有したmRNAキャリアを考案した。本研究では、アポトーシス細胞模倣高分子がマクロファージの発現型をM2型に誘導すると同時に、Tregを誘導するサイトカインであるIL-2産生誘導mRNAを使用することで、T細胞の免疫を抑制する戦略である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成31年度(令和元年度)では、mRNAキャリアとなるPS-PEG-P(GE[Trp])、及びPEG-(GE[Trp])を合成した。作成したPS-PEG-P(GE[Trp])はIL-2 mRNAと所定の割合(アニオン/カチオン比が3以上)で混和した所、粒径50 nm程度の単分散なmRNA内包ミセルが形成できていることを確認した。 令和2年度では、作製したIL-2 mRNA内包ミセルにおいて、マクロファージ由来細胞株RAW264.7に対するトランスフェクション効率を評価したが、mRNA内包ミセルによるIL-2産生は確認できなかった。原因としてマクロファージのエンドソームにおける消化が考えられた。 以上を踏まえ、令和3年度では、エンドソーム脱出能を有するアミノ酸であるヒスチジン(His)を側鎖に担持したPS-PEG-P(GE[His])や、TrpとHisの両方を側鎖に持つPS-PEG-P(GE[His-Trp])を設計・合成することでマクロファージに対するIL-2産生を誘導することを試みる。また、リン酸カルシウム系の材料を併用したエンドソーム脱出能の付与も検討する。同時に、マクロファージ以外の細胞株に対してIL-2 mRNA内包ミセルを投与し、IL-2産生の可否について評価を行う。
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今後の研究の推進方策 |
1. PS-PEG-P(GE[Trp])に対してエンドソーム脱出能を付与した設計の高分子(PS-PEG-P(GE[His-Trp]))を合成する 2. HeLa細胞に対するIL-2のトランスフェクション効率を評価する 3. IL-2 mRNA内包ミセルのマクロファージ(RAW 264.7)に対するトランスフェクション効率及び免疫抑制機能を評価する 4. リウマチモデルマウスに対してmRNAミセルを尾静脈投与し、血中対流性と炎症部位集積効率を評価する。同時に、免疫染色法によって炎症部位におけるマクロファージ・T細胞の分極を確認する
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19における研究の遅れに伴い、令和3年度への研究機関の延長を申し込んだ。 令和3年度に研究を遂行するため、次年度使用の必要が生じた。 令和3年度は主に細胞試験に関する費用に充てる。
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