抜歯後に顎骨の骨吸収が高度に進行している症例に歯科インプラントを適応する際には、骨造成術による骨形態の回復が必要とされる。2021年度は、自家骨、ウシ由来異種骨を用いた骨再生誘導法( Guided Bone Regeneration:GBR法)と同時にインプラントを埋入し、組織学的に検証を行った(Sato R et al. Int J Implant Dent.2022)。雄の一歳齢のビーグル犬6頭を使用し、下顎両側第二、第三、第四前小臼歯の抜歯を行なった。抜歯後12週に実験群ではインプラント体埋入予定部位の近遠心部に頬舌2mm、近遠心3mm、深さ3mmの骨欠損を作製し、φ3.3、長さ8mmのボーンレベルインプラント体を埋入した。骨欠損には自家骨及びウシ由来異種骨を填入し、カバースクリュー装着後、吸収性コラーゲンメンブレンで被覆した。対照群は骨欠損を作製せずにインプラント体を埋入した。手術後12週にカバースクリューを除去してヒーリングアバットメントに交換し、さらに4週後に3-0絹糸の結紮を開始した。結紮糸を4週間保持させることでインプラント周囲炎を惹起 し、その後安楽殺を行った。対照群、自家骨群、異種骨群においてBone-to-implant Contact(BIC)、インプラントショルダーからの骨欠損底部までの距離 (First BIC: fBIC)、骨欠損面積に統計的に有意な差は認められなかった。新生骨面積は自家骨群の方が異種骨群より大きい傾向にあったが、統計的に有意な差は認められなかった。本研究の結果より、自家骨、異種骨を用いたGBR法とインプラント同時埋入法の有効性が示唆された。COVID-19感染拡大の影響により、当初目的としていたインプラントの咬合機能評価までには至らなかったが、今回得られた知見は、今後の歯科インプラント治療の発展に大きく貢献することが期待される。
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