研究課題/領域番号 |
19K19050
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
坂口 晃平 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (70801455)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 低酸素 / 細胞外膜小胞 / エクソソーム / 骨再生 / 間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
①幹細胞から分泌されるエクソソームへ低酸素があたえる影響を評価した。21%と1%の酸素濃度で培養したMSCsからエクソソームを回収したところ、1%で培養した場合の方が有意に回収されるタンパク質量(エクソソーム量)が多かった。透過型電子顕微鏡を用いてそれらを観察したところ、1%で培養した場合の方が、直径100nmほどの大きな球体としてエクソソームが観察された。またナノトラッキングアッセイを行ったところ、1%条件の方が大きな粒径にピークをむかえる分布を示した。これらの結果から、低酸素で培養した場合、大きな粒径の小胞が分泌されるようになり、分泌量も増加することが明らかとなった。 ②低酸素条件のMSCsから回収したエクソソームが細胞動態にあたえる影響を検証した。transwell migration assayを行ったところ、21%酸素濃度の場合と比べて、1%酸素濃度で培養したMSCsから回収されたエクソソームの方が、ラットMSCsおよびヒトMSCsの遊走細胞数が多かった。また、tube formation assayを行ったところ、21%酸素濃度の場合と比べて、1%酸素濃度で培養したMSCsから回収されたエクソソームの方が、HUVECsの管腔形成が亢進し、分岐部が増加した。 ③幹細胞由来エクソソーム中に含まれる核酸へ低酸素がおよぼす影響を検証した。21%と1%のそれぞれの酸素濃度で培養したMSCs由来エクソソームは、小胞内に含有している核酸のプロファイリングが異なっていた。 これらin vitro実験の研究成果をまとめて、国際学会(EAO Congress 2019 - 28th Annual Scientific Meeting:2019年9月葡国)で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画していた研究内容は計画どおりおおむね実施できた。初年度の実験結果により低酸素環境によって、エクソソームの分泌量が増大し、粒径も増大することがあきらかとなった。低酸素条件のエクソソームを投与されたラット骨髄由来間葉系幹細胞は増殖能が亢進し、ヒト臍帯静脈内皮細胞の管腔形成が亢進した。今後は、エクソソーム内の核酸のプロファイリング、クラスター解析をさらにすすめ、低酸素条件があたえる影響を評価する。ラット頭蓋骨骨欠損モデルを用いた動物実験で骨再生能を評価することで、低酸素条件が幹細胞の分泌物に与える影響を評価していく。
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今後の研究の推進方策 |
■複数の低酸素培養条件で回収したMSCs-Exo内の核酸の変化を検証する。MSCs-Exoを投与した培地で培養したMSCsからRNAを回収した後、マイクロアレイを行いmiRNA発現プロファイリングを行う。作成されたmiRNAプロファイルどうしを比較して、3倍以上高く発現していたものを骨再生に有効なmiRNA候補として選定する。 ■複数の低酸素培養条件を設定してMSCs-Exoを回収し、ラット頭蓋骨骨欠損モデルへ投与して骨再生能を比較する。Wistar/ST ラット8 週齡雄にトレフィンバーを用いて頭蓋骨骨欠損を作成しMSCs-Exo をアテロコラーゲンスポンジ(テルダーミス)を足場として欠損作成部位に投与する。対照群にはPBS を足場に含浸させて投与する。投与後8 週にて検体を回収し評価する。μCT を撮影しX 線学的に、組織切片を作成して組織学的に骨形成量を評価する。川本法により凍結切片を作成し、骨再生機序に関して免疫組織化学的に評価する。CD44 やCD90、CD31 に対する抗体を用い内在性幹細胞の遊走や血管新生などを評価する。MSCs-Exo の投与部位からRNA を回収して、Realtime RT-PCR を行い骨形成関連遺伝子、血管新生関連遺伝子の発現を評価し骨再生機序を検証する。 ■高い再生能を有するMSCs-Exo内で高発現であったmiRNAの機能解析を行う。上記で選定されたmiRNAに関してmiRNAの機能解析として、miRNAインヒビターを用いmiRNAの機能を抑制、他方でpCMV-MIRプラスミドを用いmiRNAを過剰発現させて、骨形成関連遺伝子発現や細胞動態の変化、ラット頭蓋骨欠損モデルで骨再生能を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症による流通の麻痺、遅滞から、初年度に予定していた消耗品の購入が一部困難であった。次年度に購入を行いin vitro実験で使用して結果を蓄積していく予定である。
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