研究実績の概要 |
がん化学療法による口腔粘膜炎の原因には,口腔組織中の活性酸素種(Reactive oxgen species:ROS)が関与していることが分かっている.従って,口腔組織中のROSを低下させる治療法・治療薬が口腔粘膜炎の発症予防に有効であると期待できる.一方で有機ゲルマニウム(bis-β-carboxyethylgermaniumsesquioxide:Ge-132)は日本で開発された半金属有機化合物であり,in vitro実験において細胞内のROSを減少させることが報告されている. 本研究の目的は,抗酸化物質であるGe-132に,口腔粘膜炎を予防する効果があるか否かを検討することである. 令和元年度では,Ge-132の抗炎症作用を確認するために炎症性サイトカイン(IL-1β,TNF-α)の免疫染色を行い陽性細胞率を比較した. 令和2年度は,Ge-132の口腔粘膜適応時の至適濃度の確認を行うことであったが,口腔粘膜炎には創傷と同時に治癒を行っていることから,治癒に関係するとされているトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)の比較を行った. 令和3年度では,抗炎症作用に焦点を絞り,Ge-132の至適濃度の検討を行った. 8週齢Wistar系雄性ラット18匹を,「0.5%Ge-132含有軟膏塗布」群と,「1%Ge-132含有軟膏塗布」群, 「5%Ge-132含有軟膏塗布」群 に分けた.実験1日目に50%酢酸を染み込ませた直径3mmろ紙をラット舌下面に30秒間貼付し,その後除去した.2日目から6日目の間は酢酸貼付部に軟膏塗布(単軟膏及び1%Ge-132含有軟膏)を1分間貼付した.実験終了後,全身麻酔下で安楽死させ,舌の摘出を行い,ホルマリン固定後,免疫染色を行い陽性細胞率を比較した.その結果,TNF-αの陽性細胞率においてすべての群で有意な差を認めなかった.
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