研究課題/領域番号 |
19K19053
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
牧原 勇介 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (40760418)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ハイドロキシアパタイト / 骨粗鬆症 |
研究実績の概要 |
骨粗鬆症の患者は破骨細胞活性が亢進し,骨質および骨代謝が低下している。そのため,骨粗鬆症患者における骨欠損部の回復は非常に困難で,その劣悪な骨リモデリング環境でも,骨形成を確実に達成する骨移植材の開発が望まれている。本研究は,連通多孔性ハイドロキシアパタイト(HA)にリン酸処理を行い,生体活性作用を持つ生体活性型連通多孔性HAである“骨形成促進型HA”を開発,骨粗鬆症を有する骨欠損部位に対して骨形成促進型HAによる骨再生を行うことで骨質ならびに骨欠損を改善し,さらに,骨再生部にインプラントを埋入し,その支持能を評価・検討する。これらにより「骨形成促進型HAを応用した骨粗鬆症におけるインプラント・骨再生療法」の確立をめざすことである。 そこでまず,当該年度は下記の研究1を行った。 研究1:骨形成促進型HAの破骨細胞活性に対する分化動態の検討;骨形成促進型HAプレートを破骨前細胞(MLC-6)の培養実験に用いて破骨細胞の分化動態を検討した。 まず,骨形成促進型HAの作製を行い,その作製した骨形成促進型HAプレートを用いて破骨細胞分化抑制の検討を行った。骨形成促進型HAプレートは過去に当該研究者が携わった研究結果をもとに作製し,構造上問題なく作製できた。 またその後,破骨細胞分化誘導培地において,Real-time qPCR解析,ELISAおよびTRAP染色による検討を行ったが,ともに骨形成促進型HAの破骨細胞抑制を促す傾向となった。 これによりIn vitro における骨形成促進型HAの破骨細胞に対する抑制作用のメカニズムの一端が解明できたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は研究1:骨形成促進型HAの破骨細胞活性に対する分化動態の検討;骨形成促進型HAプレートを破骨前細胞(MLC-6)の培養実験に用いて破骨細胞の分化動態の検討を行ってきたが,おおむね順調に進展しているものと考える。 現状では,連通多孔性HAプレートを用いた骨形成促進型HAの作成は,問題なく成功しており,それを使用した破骨細胞分化抑制の検討も問題なく進展している。Real-time qPCR解析ではRANKL,OPGおよびVDRのmRNA発現量は差が出ているがELISAによるTRAP5bの活性は破骨細胞分化抑制傾向にとどまっている。TRAP染色によるPit formationの観察においてもELISAと同様である。しかしながら,今後はn数をもう少し増やし,実験手技をより安定させることにより問題は解決できるものと考える。上記の対応で問題解決しない場合は骨形成促進型HAの作製条件を再度検討し,対応する。
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今後の研究の推進方策 |
研究1:骨形成促進型HAの破骨細胞活性に対する分化動態の検討は,おおむね順調に進展しており,今後は研究1と併行して,研究2:骨形成促進型HAによる骨形成およびインプラント支持の検討を行っていくものとする。まず骨粗鬆症モデルラビットの作製を行う。動物12羽の両側卵巣摘出を行い,2週後からMPAを筋肉内注射にて4週間投与し,骨粗鬆症モデルラビットを作製する。また残りの12羽に対し偽手術を行いコントロール群とする。これは以前,当該研究者が携わった研究で手技を確立しており,また実験設備等も整っているため,問題ないものと考える。その後,両側大腿骨の片側には骨形成促進型HAを埋入し,もう片側には連通多孔性HAを埋入する。12週の治癒期間の後,左右骨再建部の中央にインプラントを埋入し,埋入トルクの測定を行う予定である。埋入トルク値および埋入4週,8週にISQ 値を測定し,μCT 撮影後,一方をインプラント引き抜き試験にて,逆トルク値を測定(n=6)。 他方は骨組織を採取し,非脱灰研磨標本を製作し,組織学的,組織形態計測学的(骨・インプラント接触率および新生骨面積率)に評価を行う計画だが,実験動物の骨折や術中の死亡等予想できるため,可及的速やかに研究を遂行していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、細胞実験の追実験を行っており、次年度に消耗品等の使用を繰り越す予定である。
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