骨粗鬆症の患者は骨質および骨代謝が低下している。そのため,骨粗鬆症患者における骨欠損部の回復は非常に困難で,その劣悪な骨リモデリング環境でも,骨形成を確実に達成する骨移植材の開発が望まれている。本研究は,連通多孔性ハイドロキシアパタイト(HA)にリン酸処理を行い,生体活性作用を持つ連通多孔性HAである“骨形成促進型HA”を開発,骨粗鬆症を有する骨欠損部位に対して骨形成促進型HAによる骨再生を行うことで骨質ならびに骨欠損を改善し,さらに,骨再生部にインプラントを埋入し,その支持能を評価・検討した。これらにより「骨形成促進型HAを応用した骨粗鬆症におけるインプラント・骨再生療法」の確立を目指し,以下の成果を得た。 〇研究1:骨形成促進型HAの破骨細胞活性に対する分化動態の検討 Real-time qPCR解析ではRANKL,OPGおよびVDRのmRNA発現量は差が出ているがELISAによるTRAP5bの活性は破骨細胞分化抑制傾向にとどまっている。TRAP染色によるPit formationの観察においてもELISAと同様であった。これらの結果によりIn vitroにおける骨形成促進型HAの破骨細胞に対する抑制作用のメカニズムの一端が解明できた。 〇研究2:骨形成促進型HAによる骨形成およびインプラント支持の検討 インプラント埋入時において埋入トルク値には有意な差は認めなかった。ISQ値においてはインプラント埋入時において骨形成促進HA群が連通多孔性HA群に比較し優位に高い値となった。埋入4週および8週においては有意な差は認められなかった。また逆トルク値においても有意な差は認めなかった。ISQ値の埋入4週目および8週目において有意な差が認められなかったことは,治癒期間の設定が長すぎたためと考察する。治癒期間の設定を短期間に変更することでより良い評価が行えたものと考える。
|