研究課題/領域番号 |
19K19054
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
武川 恵美 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 助教 (50633872)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | インプラント / セメント / 歯科 / 通電 |
研究実績の概要 |
本研究では、申請者の所属する研究室でこれまでに開発した、「強固な接着」と通電による「容易な分離」を両立したスマートな歯科用セメントを、セメント固定式インプラントに応用し問題解決を行うため、上部構造の素材である非導電性素材(セラミックス、ハイブリッドレジン)を介したセメントへの通電を可能にする設計とその評価を行い、インプラントの新たな着脱様式の開発を目指している。 今年度は、通電時のスマートセメントへの電気伝導の様子を、両極に銅を用いて調べた。スライドガラスに約6㎜幅の銅テープを、両極に貼り付けた。隙間は約2㎜とし、イオン液体は10%(RX10)、電圧は3V、19Vとした。3V、19Vでは、アノード側の銅とセメントの界面が青緑色に変色し、カソード側では気泡の発生が観察された。 本研究で用いたグラスアイオノマー系レジンセメントには硫酸塩および、ポリカルボン酸を含有していることから、現地点ではアノード側では硫酸銅が発生し、カソード側では水素が発生したことにより、以上のような現象が観察できたと推測した。さらに、同じ銅テープをカソード側が25㎜、アノード側が6㎜なるよう張り付け、アノード側周囲にセメントが付着するよう両極間の隙間を充填した。イオン液体は25%(RX25)、電圧は1V、両極間の隙間は0.38~0.5mmとし、保管方法は、①大気中、②大気中+通電前に水中に10分間浸漬した試料を作製した。①は通電しなかったが、②はカソード側直近のアノード側から青緑色に変色しはじめ、時間とともにアノード側の周囲に変色が広がっていく現象が観察できた。これは、電極間の距離が近い部位から優先的に通電が始まり、順次距離の遠い部位に通電していくと考えられる。カソード側でも気体発生が観察できた。この現象も前述の実験と同じ機序であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で開発中のスマートセメントは、生体に為害性のない範囲の通電により接着力を低下する必要があるため、可能な限り低電圧・低電流であることが望ましい。そこで、今年度は低電圧を印加した際のセメントへの電気伝導の様子、およびさらに出力を低下した時に両極とセメントの界面で起こる反応が変化するかどうかを調べた。現在まで、おおむね予定通りに進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
臨床では、上部構造の接着のセメント厚さは数20~30μmとされているので、両極間の隙間をさらに小さくし、電圧をさらに低下した際の両極間のセメント界面で起こる現象を観察する必要がある。来年度は、1V以下の電圧を印加した時の両極のセメント界面にみられる現象を調べ、適切な通電条件を絞り込む。また、良好な結果が得られれば、ハイブリッドレジン、ジルコニアで冠状試料を作製し、通電により接着力が有効に低下するかを調べる予定である。 その際、ハイブリッドレジン・ジルコニアは研究室内での加工が困難であるため、加工費が計上される。また、ハイブリッドレジン・ジルコニアはアクリルより遥かに高価である。今年度の実験結果から、来年度は実験条件数が増加する。よって、当初の予定以上にイオン液体・セメントが必要になると予想される。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で、出張がなくなったこと、人件費がかからなかったことにより次年度使用額が生じた。よって、来年度は当初の計画よりも実験条件や各条件の試料数を増やして実験を行う予定である。その場合、イオン液体やセメントも更に必要であることから来年度は予定以上の費用が必要になると予測している。
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