超高齢社会が到来し、インプラント治療は歯を失った後に行う補綴治療として広く認知され、多くの患者の機能回復に用いられている。しかし、その普及に伴い様々な合併症が報告され、なかでもインプラント周囲炎に関する報告が多い。そのため、インプラント周囲炎に対する対応策の確立が臨床上の課題となっている。 インプラント周囲炎は,わずかに存在しているとされる上皮性付着の破綻に始まり,さらなる炎症の進展に伴って起こる上皮の下方増殖によって引き起こされる。インプラント周囲上皮の下方増殖による深いポケットの形成は、嫌気性細菌が主体である歯周病細菌に対して発育する環境を与えてしまう。またインプラント周囲上皮の下方増殖は、結合組織の減少を引き起こし、結合組織は減少したその幅を確保しようとするため、結果として骨の吸収を引き起こすとされる。そのため上皮・結合組織がどのような分子を発現し、組織の恒常性を維持し、生物学的幅経を維持しているのかを理解することは重要である。 そこで、本研究では、インプラント周囲上皮がどのような機序で恒常性を維持しているのか、インプラント周囲上皮と結合組織で発現する上皮の恒常性・増殖性に影響を与える因子を同定することとした。研究の結果、インプラント周囲上皮・結合組織におてい特異的に発現する、プロテアーゼ阻害作用を有する分子、抗炎症作用を有する分子、炎症性サイトカインの発現を同定することができた。
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