研究課題/領域番号 |
19K19060
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
佐藤 佳奈美 (藤田佳奈美) 日本大学, 松戸歯学部, 専修医 (00801177)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | インプラント / 表面処理 / リン酸カルシウム / ラット / 動物実験 / 引き抜き試験 / 骨密度測定 / Micro-CT |
研究実績の概要 |
まず生体骨アパタイト(以下SBM)をチタンインプラント表面にコーティングする予備実験を行った。チタンは非常に優れた耐食性を有しているため、通常の口腔内環境で腐食は発生しないことが報告されている。しかし、酸性のフッ素存在環境では微量のフッ化水素が生成され、チタンは腐食することが報告されている。フッ素歯面塗布剤はフッ素濃度が約9,000ppm、pH2.5の環境下ではチタンが腐食するという報告から、予備実験としてSBMのpHに着目してコーティングを行った。中川らは0.1%フッ化ナトリウム水溶液にチタンを浸漬した結果、pHが4.3より低いと腐食が生じると報告している。よって本研究は予備実験として0.4% H3PO4中にSBMを0.4g混和すると、その溶液のpHは4.51だったことよりコーティング液によるチタンへの腐食に影響は無いと考えた。さらに表面処理の効果としてコントロール群はブラスト処理、実験群はSBM表面処理について電子顕微鏡観察を行った。ブラスト処理はインプラント表面に多数の凸凹する面が観察された。SBM群はブラストした面とは異なり凹凸の無いスムースで厚みのある面が観察された。 この実験は7週齡時に卵巣摘出手術を行ったラットを骨粗鬆症モデルとして使用した。ラットは予備飼育後の9週齡に全身麻酔を行い、左側大腿骨遠位端から10mmの位置に剃毛と消毒後、切開し、骨を露出させ目視下にてインプラント埋入を行なった。埋入に先立ち埋入窩を形成した。埋入窩は大腿骨に垂直方向に直径1.2mmとした。インプラントは埋入後2週および4週後に大腿骨ごと摘出し、インプラント引き抜き試験、Micro-CT撮影を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は生体微量金属元素のCO32-,Mg2+,Zn2+,F-をリン酸カルシウムに配合した生体骨アパタイト(Synthetic bone mineral: SBM)をインプラントにコーティングする表面処理法を開発し、埋入後に形成される早期な新生骨形成と骨質向上を明らかにする。そこで、申請者は従来表面処理で使用するリン酸カルシウムと比較して生体骨アパタイトで早期な骨形成と骨質向上を解明する事を本研究の目的とする。 本年度の進捗状況として、1)SBMの製作として、リン酸カルシウム: 100gと塩化マグネシウム: 10gおよび塩化亜鉛: 10gを1000mlの超純水(フッ化ナトリウム: 100gおよび炭酸水素カリウム: 100g を混和)を95℃にて12時間混和させた後に加水分解により生成を行った。また、予備実験推してSBMの表面処理の予備実験を行い、その状態を電子顕微鏡観察から結晶の存在について確認を行った。 そこで、本研究は動物実験を遂行するにあたり、日本大学松戸歯学部動物実験委員会にて審査、学部長の承認を得られたので、日本大学動物実験運営内規等関連法規を遵守の上で動物実験を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究はインプラントに2種類の動物実験を使用する(①コントロール群:通常のラット、②7週齡時に両側卵巣摘出を行い骨粗鬆症モデルとするラット)。 インプラントのサイズは直径1.2mm、高さ4.0mmの円柱とし、上端から0.5mmの位置に引張試験用の通し穴を作成したものする。全てのインプラントは直径110μmのブラスト粉末によるブラスト処理と超音波洗浄を行った後に、オートクレーブで滅菌処理を行う。その中の12本はコントロール群とする。別の 12 本は生体骨アパタイトコーティング群とする。 実験方法として、実験動物は9週齢時に全身麻酔下(塩酸メデトミジン0.15mg/kg, ミダゾラム2.0 mg/kg, 酒石酸ブトルファノール2.5mg/kgの混合麻酔薬; 腹腔内投与)において、左側大腿骨遠位端から10mmの位置に、メスで皮膚を約10mm切開し、筋肉を鈍的に剥離し骨膜を剥離させ骨面を露出させる。インプラント体の埋入窩は、大腿骨の長軸に対し垂直に注水下で直径約1.2mm、深さ約4.0mmの埋入窩を直径1.2mmラウンドバーにて、左側大腿骨遠位端から10mmの位置に1カ所形成し、1本のインプラント体を埋入し縫合する。術後は消毒を行い、苦痛を排除するため鎮痛剤は術後3日間酒石酸ブトルファノール0.01mg/kgを筋注投与する。 インプラント体埋入後2および4週後に各群炭酸ガスを用いて安楽死させ、左側大腿骨を摘出し試料とする。試料はインプラント体の引張試験、Micro-CT撮像および病理組織学的観察(ビラネバゴールドナー染色)によりオッセオインテグレーションの評価を行い、生体骨アパタイトコーティングが骨粗鬆症モデルラットに対して、全身の骨質強化によりQOLの向上につながるか評価を行う。
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