研究課題/領域番号 |
19K19062
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
白井 麻衣 鶴見大学, 歯学部, 助教 (80779819)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 歯科用インプラント / 吸収性メンブレン / 骨誘導因子 / 硬組織再生 |
研究実績の概要 |
本研究は持続的な骨組織再生効果を期待した骨誘導因子を徐放するメンブレン開発の基盤を生化学・材料学の両面から築き、歯科インプラント治療が困難となる病的歯槽骨吸収症例への臨床応用が可能かどうかを検証することを目的としている。 1)骨再生に効果のある生理活性物質や関連因子を検出し、その作用機序を明らかにすることで効率的な骨誘導を促すタンパク質群の同定を目指す。 2)生体への移植実験を通して、骨形成に有効な速度で骨誘導因子を徐放する人工メンブレンの開発を目指す。 以上のことから、現状で市販されているメンブレンを使用した場合より、量的にも質的にも優れた骨増生を可能にし、インプラント治療の適応範囲を広げることを目的とする。 骨タンパク質中の生理活性物質・関連因子の同定およびメカニズムを解明するために、第一段階として、脱灰したラット長管骨より抽出した骨タンパク質を各種カラムで分離・精製した。分離精製したタンパク質画分はSDS-PAGEで電気泳動を行い、CBB染色およびSA染色で分離精製が問題なく行われたことを確認した。特定された画分に含まれるタンパク質に対しWestern Blot法を用いて種類の同定を試み、活性のあるフラクションを明らかにする検証を行っている。次に、抽出したタンパク質を再度骨に吸着させた場合に抽出前と同様の骨形成能の有無を分析する動物移植実験を行った。各条件の試料をラット背部皮下に移植した(n=3)。埋入から28日後に屠殺、micro-CTによる画像分析を行い、形態学的・組織学的分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脱灰したラット長管骨より抽出した骨タンパク質を各種カラムで分離・精製した。分離精製したタンパク質画分はSDS-PAGEで電気泳動を行い、CBB染色およびSA染色で分離精製が問題なく行われたことを確認した。特定された画分に含まれるタンパク質に対しWestern Blot法を用いて種類の同定を試み、活性のあるフラクションを明らかにする検証を行っている。次に、抽出したタンパク質を再度骨に吸着させた場合に抽出前と同様の骨形成能の有無を分析する動物移植実験を行った。各条件の試料をラット背部皮下に移植した(n=3)。埋入から28日後に屠殺、micro-CTによる画像分析を行い、形態学的・組織学的分析を行った時点まで計画通り進行しており、その後も動物実験を継続する計画であったが、新型コロナウイルスの感染防止のため研究を中断していたため、進行が遅れている状態である。
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今後の研究の推進方策 |
抽出した骨タンパク質の分析としてBMPによって骨分化マーカーであるアルカリフォスファターゼの活性が上昇するC2C12細胞を使用し、骨分化能を有するタンパク質画分を明らかにする実験を追加し現時点の結果を裏付ける。 ここまで骨誘導因子について検証を行ってきたが、最終的に人工材料への置換を目指している。シート本体はタンパク質を混合することが可能で、生体内で吸収される素材が望ましい。コラーゲン素材のテルダーミス、徐放性コラーゲンゲル、ポリ乳酸系の素材のpoly lactic-co-glycolic acid(PLGA)などの生体内分解・吸収性高分子材料であり、どの足場が最も骨誘導因子の保持に適しているか比較検討を行う。材料の気孔率にも留意し、製作した各材料によるシートについて、in vitroで徐放時間を計測する。実験段階では生理活性物質の代用としてBSAを用いることを検討している。製作した各材料によるシートに実験段階ではFITC-BSAを内包させたものをラットに移植し、生体内における生分解性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は実験に使用する備品や動物を購入していたが、次年度は実験結果に必要な機材を購入する必要がある。本年度必要として購入する物品は比較的安価なものが多く、評価に用いる機材や試薬の方が高価である。そのため本年度の予算に余分が生じ、次年度に繰り越すこととした。
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