研究課題/領域番号 |
19K19062
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
白井 麻衣 鶴見大学, 歯学部, 助教 (80779819)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歯科用インプラント / 吸収性メンブレン / 骨誘導因子 / 硬組織再生 |
研究実績の概要 |
6週齢SDラットより脛骨を採取し4M塩酸グアニジン、0.1M塩酸,再度4M塩酸グアニジンを用い段階的に骨タンパク質を抽出し、各々をG1画分・H画分・G2画分とした。それらと抽出後の残存物を凍結乾燥し電気泳動とWB法、質量分析によるタンパク質の同定にて生化学分析を行った。 6週齢SDラットより採取した大腿骨より脱灰骨シート(DBS-P)を製作しDBS-Pから塩酸グアニジンを用いて骨タンパク質を抽出したシート(DBS-E)、DBS-EにG2画分由来の骨タンパク質を再吸着させたシート(DBS-R)、比較のためDBS-Rと同様の操作をバッファーのみで行ったシート(DBS-C)を製作し、これら4種のシートを同種ラットの四肢の腋下皮下筋膜に固定し8週間留置した。術後7週目にアリザリンレッド を皮下に投与した。術後8週後屠殺しシートを採取した後、micro-CT撮影と三次元再構築ソフトを用いて画像解析、非脱灰切片よりアリザリンレッドの検出を行った。 【結果と考察】 電気泳動の結果、分子量50-64kDaの領域にタンパク質の存在が認められ、WB法にてオステオポンチン抗体を用いたところ50-70kDAの領域に発色が認められた。タンパク質同定の結果として45-60kDaの領域から骨増生に関与するタンパク質が検出された。採取されたシートのmicro-CT画像から、DBS-Pは他のシートと比較して高度な石灰化が認められ、DBS-Rには小規模な石灰化が認められた。一方DBS-E,DBS-Cには石灰化が認められなかった。切片標本の観察においてはDBS-P、DBS-Rに強い蛍光が認められ脱灰骨シートの石灰化が認められた。これらの結果からG2画分に含まれる骨抽出物には石灰化誘導作用があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた動物実験のサイクル(4週)で有意な結果を認めることができず、飼育期間を延長して(8週)としたが、準備段階で新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が発出され、動物舎での動物飼育が困難となった。宣言解除により再開し、飼育期間が長く結果を出すのに時間を要していたが、徐々に結果が出ている。
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今後の研究の推進方策 |
ここまで骨誘導因子について検証を行っており、最終的に人工材料への置換を目指していたが、誘導因子の生化学的な分析に時間を要している。シート本体はタンパク質を混合することが可能で、生体内で吸収される素材が望ましいと考えている。しかし、今回の研究では予定していた種類の材質間の比較(コラーゲン素材のテルダーミス、徐放性コラーゲンゲル、ポリ乳酸系の素材のpoly lactic-co-glycolic acid(PLGA)などの生体内分解・吸収性高分子材料のうち、どの足場が最も骨誘導因子の保持に適しているかの比較検討)は困難であるため、対応として現在最も使用されている材質で分析した誘導因子が徐放されるかどうかを分析することを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究開始当初に新型コロナウイルス感染症感染拡大による緊急事態宣言発出のため研究の全体的な進行が大幅に遅れ、現在遅れを取り戻しているところではあるが、予定した使用額を繰り越すこととなった。生化学的な分析は最終段階であるが、追加実験に用いる試薬、外部に分析を依頼する場合の費用が必要になる予定である。
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