研究課題
口蓋裂という先天異常では口蓋形成術が必要で、その際筋肉の緊張が強いと、高度の瘢痕組織となり、手術した部位に穴が開いたり、上顎の発育不全の原因になったりする。多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma; 以下PRP)は、自身の血液から作ることができるもので、傷を治すために必要な成分を多く含みます。その成分を口蓋形成術に応用することで、筋肉の再生を促し、瘻孔形成や上顎の発育不全の防止につながるあらたな治療法の開発を目指す。本研究では、骨格筋内に存在する筋衛星細胞およびPEGFRα陽性間葉系幹細胞の共存培養系や、筋損傷モデルマウスに対し種々の方法で調製 したPRPを投与し、効果やプロテオームを比較することで、PRPの最適な調整法や、二者の細胞の相互作用を通じて筋衛星細胞の増殖や分化を促 進している因子を明らかにし、筋再生と筋・粘膜を含めた瘢痕の少ない再生法の確立につながる知見を得ることを目的とする。2019年度は、骨髄間葉系幹細胞を含む複数種の間葉系細胞を分離、培養した。また、血球成分を加えた培養を行い、その影響について検討した。さらに、これらの細胞を添加因子を含んだ培地で培養し、その分化能について評価した。加えて、筋損傷モデルマウスの確立に向けた検討を行った。
2: おおむね順調に進展している
数種の間葉系細胞を分離、培養し、検討を行っている。また、血球成分を加えた培養を行うことで、その影響を確認している。筋再生に対するPRP製造過程の検討を継続している。
今後も引き続き、下記検討を進めていく。①in vitroにおける筋衛星細胞、PDGFRα陽性間葉系幹細胞に対するPRPの影響の評価 ②筋損傷モデルマウスの確立 ③筋再生に関する最適なPRP作成条件の検討④PRPに対するプロテオムアレイ ⑤筋衛星細胞増殖分化促進因子の同定
今年度の研究が当科実験室に完備されている器機で行うことができ、2020年3月ごろより世界的に流行したCOVID-19の影響により、学会が中止や延期となり、出張費がなくなった。最終年度におけるけんきゅうのまとめや論文作成にむけ準備したい。
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日本有病者歯科医療学会雑誌
巻: 29 ページ: 318-322