研究課題/領域番号 |
19K19070
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
古賀 喬充 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 客員研究員 (50779428)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多血小板血漿 / 凍結乾燥保存 / 歯槽骨再生 |
研究実績の概要 |
2020年度は、フリーズドライ多血小板血漿(以下、FD-PRP)の臨床応用に向けたパイロット研究を優先して行った。ヒトに対する通常の新鮮PRPを使用した治療は既に世界的に実施されており、これまで重大な疾病等を認めた例は報告されていない。FD-PRP は製造や臨床使用にあたり、特別な試薬等を使用しないため、基本的に新鮮PRPと同等の安全性が予測されるものの、凍結乾燥処理および保存という工程を介するため、その安全性については検証が必要であった。そこで我々は、パイロット研究としてFD-PRPを応用した骨再生治療を行い、まずはその安全性の検証を行った。 デンタルインプラント治療を前提とした上顎洞底挙上術が適応となる5例を対象として、FD-PRPを人工骨とともに移植した。主要評価項目の安全性は、術後4週間の臨床所見および血液検査所見から評価し、全例で術後有害事象の発生はなかった。また副次的評価項目の骨形成能は、パノラマX線所見とCT所見、およびインプラント2次手術時のISQ値から評価した。術後6か月で上顎洞底の垂直的挙上は術前と比較し有意差をもって維持されており、インプラント2次手術時のISQ値は全例70以上で安定していた。これらの結果から、PRPに対して凍結乾燥保存を行っても安全性には影響を与えず、かつ一定の治療効果が担保されていることが示唆された。 この内容を研究論文としてJournal of Clinical Medicineに報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、2020年度はPRP添加Corning PuraMatrixペプチドハイドロゲルをマウス頭蓋骨膜下に移植し骨再生能を評価する予定であったが、FD-PRPの臨床応用へ向けた臨床試験の開始準備が整ったため、こちらを優先して行うこととなった。 結果的にFD-PRPの臨床試験は順調に進行し、研究成果を得ることができたが、当初の動物実験でのin vivo試験は進めることができなかったため、総合的な進捗状況はやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に行ったFD-PRP臨床応用のためのパイロット研究により安全性が示されたため、今後はまずFD-PRPの有効性に関するランダム化比較試験を推進する計画を立てている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画に一部変更があり、当初予定していたマウス頭蓋骨膜下への移植実験ができず、マウスの購入を見送ったため次年度使用額が生じた。 次年度、臨床研究の運営費用および移植実験ためマウス購入費に計上する。
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