本研究の目的は、採取が容易であり安全な自己細胞であるヒト歯髄を用いて新たな骨造成システムの確立を行うことである。不要な抜去歯から歯髄幹細胞を単離培養し、骨芽細胞への分化誘導した三次元的な積層シートの作製を行い、大型動物骨欠損モデルへの移植検証を行うことで、骨欠損における骨再生の臨床応用が目指せると考えている。そして、最新のマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析計を使用することによって各種骨基質タンパク質を定量的に評価できることから、より確実な骨再生の評価を行うことができると考えている。デンタルインプラント植立時の骨欠損に対する骨造成法は多く散見されるが、ヒト歯髄をソースとした骨造成法はいまだ確立されていない。また、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析計による骨評価は今までに報告がない。 歯髄幹細胞から作製した骨芽細胞積層シートを大型動物骨欠損モデルに移植したA群、B群、周囲骨より自家骨を採取し骨欠損部分に骨造成をしたC群、骨欠損状態のままのD群、すべての群においてマイクロCTによる評価を施行した。また、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析計による骨評価が難しく走査型電子顕微鏡(SEM)による骨評価に切り替えた。 骨評価において、A群、B群、C群、D群、すべての群で骨破壊が進んだ結果となった。 要因として、骨芽細胞積層シートの固定が困難なこと、移植部分歯肉創部保護が困難なこと、創部清潔状態確保が困難なことが考えられた。
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