研究課題
本年度は、Agを担持したリン酸八カルシウムの調製について取り組んだ。Agイオンを含有した緩衝溶液中で易溶性のリン酸カルシウムを加水分解させると、Agを担持したリン酸八カルシウムを調製することが出来た。形成したAg担持リン酸八カルシウム中のAg含有量は、加水分解に用いた溶液中のAg濃度と比例関係にあった。首尾よくAg担持リン酸八カルシウムが調製出来たため、これの生物科学的評価についても行った。本Ag担持リン酸八カルシウムの抗菌性について、口腔常在菌を用いて評価した。液体培地中にて、口腔常在菌であるSreptococcus Mutanceを培養し、対数増殖期にAg含有量の異なるOCP粉末を添加し、37℃にて24時間作用させる。培養液の上澄み液について、吸光度測定を行うとともに、白金耳を用いて、上澄み液及び、これの希釈液を寒天培地上に塗布する。塗布後1日経過時点のコロニー数を測定し、抗菌性について評価した。さらに余裕があったため、他の常在菌や、日和見菌についても評価した。いずれの菌においても、本Ag担持リン酸八カルシウムは、優れた抗菌性を示した。また、培地中へのAgの溶出はほとんど見られなかった。このことから、本Ag担持リン酸八カルシウムの抗菌機構としては、結晶表面に結晶構造に起因して露出しているAgイオンが菌と接触することによる、接触抗菌性であることが示唆された。これにより、培地中でも溶出したAgイオンに起因する変色についてもほとんど見られなかった。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度は、材料調製及びこれの最適化について行う予定であったが、年度のかなり早い段階で、求めていた性質全てを持つ材料の調製に成功した。このため、来年度行う予定であった、抗菌試験や、細胞毒性評価についても前倒しして行った。
調製したAg担持リン酸八カルシウムのin vivo評価を進める。すでに、高い抗菌性と、in vitroでの低い細胞毒性を示しているため、in vivoでどこまで望んだ性質を発揮するかについて検討を進めていく。
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